組織全体で「イノベーション創造力」を高める 強みとなるオムロン「らしさ」を認識

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SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)などが注目され、社会への貢献を事業計画に取り込む企業が増えているが、オムロンは、約90年前の創業時から一貫して社会的課題の解決を使命として掲げている。今後も、その姿勢を堅持し、社会に貢献し続ける企業であるために、現在、同社はイノベーション創造力の最大化に取り組んでいる。その一環として行ったのが、組織ケイパビリティの強化であり、とくにプロセスのバリューアップ(※)だ。共に取り組んだのはNECである。
※オムロンでは、批評に終わりがちな「レビュー」ではなく、価値を高める能動的な言動を「バリューアップ」と呼称し、推奨している。

社会に貢献し続けるためイノベーション創造力を強化

工場のオートメーションを担う「制御機器事業」、家庭用・医療用の健康機器などを提供する「ヘルスケア事業」、鉄道や道路を支えるシステムや太陽光発電用パワーコンディショナーなどを展開する「社会システム事業」、そして、電子機器に欠かせない部品を提供する「電子部品事業」の4つの事業を手がけるオムロン。

このように幅広い領域で事業を展開するのは、そこに利益の可能性があったからではなく社会課題があったから。同社は「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」という社憲を掲げ、事業を通じてよりよい社会づくりに貢献することを使命としている。

その使命を果たすために、同社は積極的に「挑戦」し、「イノベーション」の創造を目指す社風を大切にしている。「挑戦することをやめてしまったらオムロンではない」。強い自覚の下、積極的に挑戦を行い、実際にさまざまなイノベーションを起こしてきた。

その同社が現在、イノベーション創造力のさらなる強化に取り組んでいる。

「これまでオムロンが上げてきた成果は、希代の起業家であった創業者の力によるところが大きい。では、これからのオムロンは、どのような力で社会に貢献し続けていくのか。欠かせないのが『組織の力』です。組織全体で知見を共有し、全員で考え、行動し、互いに補完し合いながらイノベーションを生み出していく。その力を強化したいと考えています」と同社の髙橋 昌也氏は言う。

事業創造プロセスのバリューアップに着手

オムロン
イノベーション推進本部 DXビジネス革新センタ長
髙橋 昌也

そのためにオムロンは「イノベーション推進本部」という専門組織を2018年に立ち上げた。さらに同本部の中に「DXビジネス革新センタ」というデータやデジタル技術による付加価値の創造を目指すチームを設置するなどして、イノベーションの創造を目指している。

「創業者は個人の才覚でイノベーションを創り出しました。その環境を、組織として現代に蘇らせようというのがイノベーション推進本部設置の試みです。あえて売り上げ目標を持つ事業部から独立させたことは、両利きの経営実現の本気度を示しているといってもよいと思います。本部の設置自体が挑戦の一環ですから、さまざまな試行錯誤を繰り返しています」(髙橋氏)

このような活動の中で同推進本部が取り組んだのがイノベーション創造に関するプロセスのバリューアップだ。

同社は、これまでの経験で蓄積してきた新規事業の立ち上げに関するノウハウを「事業創造プロセス」として整理。重要かつ貴重な資産として継承し続けている。組織全体でイノベーション創造力を強化するに当たって、このプロセスをバリューアップし、強みや弱みを確認。必要なら補強することにしたのである。

長年「デザイン思考」を実践していることに親和性

バリューアップには客観的な視点が必須。そう考えた同社が選んだのがNECの「フューチャークリエーションデザインTM」である。本プログラムでは、顧客起点に立って新たな価値を創出する方法論として注目されている 「デザイン思考」を基に、事業アイデアを具体的な事業やサービスの開発に導くための実践的な支援を行う。

NEC
DX戦略コンサルティング事業部
安 浩子

「現在、NECはDXコンサルティングビジネスの強化に力を入れています。最大の特長は『実践的』なコンサルティングサービスであること。机上の空論ではなく、NECが自身の企業変革の中で経験した苦労や、それを克服する際に行った工夫などをノウハウとして余すことなく提供して顧客企業の変革を支援しています。戦略・構想策定、組織・人材変革、働き方などの制度改革、サプライチェーンの高度化など、コンサルティングサービスの提供範囲は多岐にわたりますが、フューチャークリエーションデザインTMは、中でも新規事業創造にフォーカスしたサービスを提供しています」とNECの安 浩子氏は説明する。

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「フューチャークリエーションデザインTM」 社会やお客様の抽象的課題の定義から、具体的なプロトタイプによる検証まで、精度の高いアウトプットを提供

オムロンがNECのフューチャークリエーションデザインTMを選んだ理由は大きく3つ。

「1つ目はコンサルティングファームなどとは違って、NECが自身も事業を手がけている企業であること。理想だけではない、血が通い、魂の入った支援が期待できると考えました。

2つ目は、社会課題解決企業を標榜し、古くから『デザイン思考』の考え方を重視していること。社会への貢献を第一に考えるオムロンと親和性が高く、私たちが何を大切にしているのかを理解してもらえると感じました。

そして、3つ目は事業創造とデジタル技術の両面で専門家であること。コンサルティングだけでなく、実際の新規事業の立ち上げにおいても、間違いなく、私たちの力になってくれるはずと期待しました。以上の3点により、NECが圧倒的にわれわれの要件にマッチしていました」と髙橋氏は続ける。

オムロンらしさを再認識。自信を持って前進していける

具体的にNECは、まず過去のドキュメント類を確認して、オムロンがどのように事業創造に取り組んでいるのかを分析。同時に現在進行中の事業創造プロジェクトのミーティングなどにも参加して、オムロンの事業創造の進め方や考え方の傾向などを、実際の目でも確認した。さらにオムロンがとくにバリューアップが必要と考えていた新規事業の「価値検証」プロセスについては共に検証に取り組みながらNECの方法を紹介した。

「オムロン様のやり方を確認しながら、NECのやり方をお伝えしたり、気づいた点をお伝えしたりしていきました。例えば、ニーズがあるかどうかの議論より先に『この技術を組み合わせれば、こんな事業が開発できそう』という議論を行っていることがある。これは、製造業が陥りがちな思考の『クセ』のようなもので、NEC自身も同じ悩みを抱えていたからこそ気づき、ご指摘できました。一方、オムロン様の『らしさ』にもたくさん気づきました。とくにアイデアが生まれると、すぐに現場まで巻き込んで動き出す。そのスピード感はすばらしいと感じました」(安氏)

このような活動を通じてオムロンは事業創造プロセスを補強。変更点は、プロセスをまとめたガイドラインに反映し、編集し直した。

「例えば、プロジェクト推進者やレビューアーが同じ観点で議論、審議できるよう、クライテリアを明確にしてプロセスを再整備しました。また、モノ視点からコト視点へのシフトを図るためにも、根強く残っている製造業ならではの考え方、例えばよいものを作れば売れるという機能重視の考え方は見直すべきだと感じました。

しかし、最も大きな成果は、技術ありきではなく、社会のために挑戦しイノベーションの創造を目指す自分たちの姿勢は間違っていなかったと確認できたこと。それがオムロンらしさであり、強みなんだと再認識しました」と髙橋氏はNECと共に取り組んだ事業創造プロセス補強の成果を語る。

今後、オムロンは、補強した事業創造プロセスをベースに、さまざまなイノベーションに挑戦していく。「ガイドラインをオープンにしていくことも検討しています。多くの企業と知見を共有しながら、共にイノベーションを創造していく。それが社会にとってより意義のあることなら、そうあるべきだと考えています」と髙橋氏は言う。

オープンなイノベーションのパートナーには、もちろんNECも含まれている。「事業を横断してデータをどう管理するか。共通サービスをどう設計するかなど、あらゆる新規事業を支えるITアーキテクチャの提案など、すでに新しいプロジェクトもスタートしています」と安氏。社会課題の解決を目指す2つの企業がどのようなイノベーションを生み出すのか。大いに注目したい。
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