新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、黒人男性ジョージ・フロイド氏の死亡事故を機に抗議デモが燃えさかる米国。日本からすれば、理解に苦しむ光景に違いない。米国人は自らを律する能力を失いつつあるのか、事態はさらに悪化するのか──。
この混乱の中でも、米国の分断の深さとトランプ大統領の扇動者ぶりを際立たせた日があった。6月1日だ。大統領はこの日、政権に抗議する市民にホワイトハウスまで詰め寄られ、武力行使も辞さないと息巻いた。この件以来、大統領選挙との関連で流血の惨事が起こる可能性は増した。
6月1日、バー司法長官はホワイトハウス周辺の防御線を拡大するよう警官隊に命じた。近くの教会で大統領が写真撮影できるようにするためだ。軍用ヘリを含む暴力的な手段で警官隊が平和的なデモ隊を蹴散らす様子はテレビでも生中継された。大統領の言葉どおり「文官、軍人を問わず、連邦政府のあらゆる資源」が動員された。大統領は「善良な米国人の権利を守る。(銃を所有する権利を保障した)合衆国憲法修正第2条も含めてだ」と約束した。
大統領は修正第2条に言及することで「われわれ対やつら」の構図をつくり出そうとしたのである。デモを行っている「やつら」は、警察改革、銃規制など民主党が掲げるリベラルな政策を「われわれ」に押し付ける危険な暴徒にほかならない、という論法だ。自らの支持層に訴える形で政府の力を使い物理的な反撃に出た。
大統領はさらにこの数日後、州兵を数千人規模で首都ワシントンに派遣するよう命じた。デモの暴徒化を防ぐのに不可欠との理屈だ。だがワシントンの市長などは、火に油を注ぐことになると批判した。
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