米国の新型コロナウイルスによる死者は10万人を超え、その経済的影響で失業者は2000万人に達した。そこにミネソタ州ミネアポリスで白人警察官が黒人男性に暴行を加え死なせる事件が発生、抗議デモが全米に広がり、一部は暴徒化し放火や略奪まで起きた。
感染症・経済に人種問題が絡み合う未曾有の複合的危機である。騒乱の背後には経済格差への不満もある。黒人貧困層は新型コロナ感染者・死者の比率が高い。
こうした災禍の中、「小さな政府」を主導してきた保守派政治家や論客の間で、市場万能主義を否定し、政府の役割の重要性を見直す「大きな政府」論が高まっていることは5月16日号の本欄で紹介した。
その潮流を代表する形で、5月初めに保守系政策立案集団「アメリカン・コンパス(米国の羅針盤)」(本部・首都ワシントン)が発足した。発足に当たっての方針説明で、効率性だけを追求する「自由市場原理主義」により、①国益を無視したサプライチェーンが形成され、②自国の労働者をないがしろにする経済文化が生まれて、国民の連帯が損なわれた──と批判。市場重視の従来の保守思想はもはや「化石」であり、新型コロナ危機をきっかけに新たな道を探ると述べ、次々と提言を発表している。今回の騒乱発生前の発足だが、格差解消・人種間和解への姿勢がのぞく。
にらむ4年後の大統領選
新集団は、共和党のマルコ・ルビオ、トム・コットン両上院議員と連携している。ともに40代、2024年大統領選の共和党候補の座を狙っているとみられる。両議員は早速、新集団のサイトに寄稿し、市場万能主義により国益を無視して中国に深く依存するサプライチェーンが生まれた結果、米系企業が中国で作る医療資材まで米国への輸出を妨げられた事態を例に挙げて、国内製造業の再興を訴えた。
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