金融市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)が今月末にも利下げを行うことがほぼ確実視されている。インフレ率がなかなか目標の2%に届かないのは事実だが、減速の兆候が若干見られ始めたとはいえ、米国景気はいまだ堅調を保つ。減速が目立つ製造業の、米国経済に占めるウェートは高くない。そうした中でも「予防的利下げ」が行われるとみられているのだ(市場関係者の多くは年内に2〜3回の利下げを予想している)。まだまだ利上げが続くと予想されていた昨年末ごろとは、まさに様変わりである。
こうしたFRBの「ハト派化」の背景に何があるのだろうか。1つ考えられるのは、FRB内部の力関係の変化である。昨年11月3日号の本欄(「金融政策は『総合判断』へと回帰」)で筆者は、パウエル議長は主流派経済学の枠組みよりも実務家の「常識」を重視するのではないかと指摘した。その結果、金融的不均衡にも目配りした「総合判断」型の政策運営に向かうだろうと考えたのだ。しかし、現状は従来型の政策運営への揺り戻しが起こりつつあるように見える。
たぶん、昨年末にパウエル議長の発言をきっかけに株価が急落し、市場とのコミュニケーションに不安が抱かれるようになったことで、パウエル議長の求心力が低下したのではないか。他方で、著名な主流派経済学者でもあるクラリダ副議長が影響力を高めているようだ。物価水準目標や上下に幅を持たせたインフレ目標など、バーナンキ元議長が提唱していた政策枠組みが検討され始めたのは、その表れとみることができよう。
この記事は有料会員限定です
残り 782文字
