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金融政策は「総合判断」へと回帰 FRB議長スピーチの注目点

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【今週の眼】早川英男 富士通総研エグゼクティブ・フェロー
はやかわ・ひでお●1954年生まれ、愛知県出身。東京大学経済学部卒。米プリンストン大学経済学大学院にて修士号取得。77年日本銀行に入行後、長年にわたって主に経済調査に携わる。調査統計局長、名古屋支店長、理事などを歴任し、2013年4月から現職。著書に『金融政策の「誤解」』。(撮影:梅谷秀司)

毎年8月に開かれるジャクソンホール会議での米国連邦準備制度理事会(FRB)議長のスピーチは、世界の市場関係者の注目を集める。今年のパウエル議長のスピーチは、例年以上に興味深いものだったと筆者は思うが、市場の反応は予想外に静かだった。議長の意図が十分に伝わっていなかったのではないか。

スピーチで特に注目すべきは次の2点である。まず一つは、自然失業率や中立金利といった概念をめぐる不確実性を議長が強調したことだ。ここからは、バーナンキ、イエレン両議長の時代に特徴的だった、現実の経済情勢をニューケインジアン経済学の枠組みに当てはめて理解するアプローチからの距離が感じられる。

自然失業率や中立金利がどの程度かについては専門家の間でも大きく意見が分かれている。失業率が下がると物価・賃金が上昇する関係を示す、フィリップス曲線の傾きも、よくわからないのが実情だ。ならば、経済学博士号を持たない実務家=法律家出身の議長が、これらに過度にとらわれるべきでないと考えるのはごく自然だと思う(やはり法律家の出身で、昨春まで金融規制の担当だったタルーロ元理事も同様の見解を示していた)。

議長スピーチでもう一つ注目すべきは、「過去2回の景気後退に至る過程で、不安定化につながる行き過ぎは主に物価ではなく金融市場に現れた」と述べた点である。10年前のリーマンショックを思い出せば、至極当然の発言に聞こえよう。しかし、バブルは事前にはわからないから金融政策で対応すべきではない、金融危機の責任は主に金融監督の不十分さにあった、とするFRBの伝統的見解からは大きな逸脱である。むしろ金融の安定性を重視する国際決済銀行(BIS)の見方に近い。

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