英国内での小旅行の帰路、ウェールズとの境に近いヘリフォードの街から列車に乗った。車内の作りが、往きの列車と違い、どことなく日本の新幹線を思わせた。コート掛けやテーブルの仕様に、日本らしさを感じたのである。終着駅で確認すると、はたして日立製作所製だった。日立の鉄道ビジネスが英国で成功しつつあることは知っていたので、なるほどと思った。試験走行中の日立製列車が架線を切断するという事故の数週間前のことだ。何が事故の原因だったのかはまだわかっていない。
日立が英国の鉄道ビジネスに食い込めたのは、電車とディーゼル車の両機能を備えた列車の開発に成功したところが大きい。同じ路線の中に、電化区間と非電化区間がいまだに多く混在するためだ。
1825年に世界で初めて鉄道が敷設されたこの国では、電化率を高めることが今なお課題である。信号機や軌道、駅の施設・設備にも旧式のものが残され、それらが鉄道近代化のネックとなっている。
百年前に造られたレンガの橋梁は確かに美しい。だが、新式の高速鉄道を運行するには古すぎる。古い仕組みを残しつつ、そこに新しい仕組みを付け加えることの難しさである。
同じことは社会の仕組みにもいえる。英国は日本でいえば徳川幕府が崩壊しないまま近代になったような社会だという話を、同僚から聞いた。古い仕組みを歴史の下層に残しながら、長い時間をかけて徐々に近代化を進めてきたことの謂(いい)である。
だからといって英国に大胆な革新がないわけではない。サッチャー以降の経済構造の転換、ブレア政権による大学のグローバル化(大量の留学生を呼び込む=外貨獲得)の成功など、大胆な改革を通じた社会変化も起きている。
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