有料会員登録 東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #経済を見る眼

明暗分かれる高齢者雇用のコスト 60歳代後半層の就業促進が本格化

3分で読める 有料会員限定
  • 太田 聰一 慶応義塾大学経済学部教授
【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

いよいよ、60歳代後半層の就業促進が本格化する。5月15日の未来投資会議では、70歳までの就業機会の確保措置を企業に求める骨子案が示され、安倍首相はその法制化方針を明言した。

印象深いのは、経団連の中西宏明会長が、従来の日本的雇用慣行は必ずしも万能ではないと述べたうえで、法制度で縛ることに懸念を示していたことだ。今回の雇用確保が内包する課題を考えたい。

政府方針の土台は、7年前に成立した改正高年齢者雇用安定法だ。そこでは65歳未満の定年を定めている事業主に対して、65歳までの雇用を確保するために、定年の引き上げ、希望者全員の継続雇用制度の導入、定年廃止のいずれかを導入することを義務づけた。未来投資会議の方針は、この考え方を基本的に踏襲し、基準の年齢を70歳に引き上げるというものだ。

雇用確保年齢の5歳引き上げは、マイナーチェンジではあるが、そのインパクトは業種などによってそうとう異なるだろう。例えば現業系の職種が多い企業では、年齢の高まりとともに業務上の災害リスク、とくに死亡リスクが高くなることが知られている。また、急な体調変化に対してきめ細かな健康管理が求められる。したがって、現業系の仕事が多い企業で雇用確保のコストが高くなる可能性が高い。

また、現行の65歳までの雇用確保措置の段階でも企業によって取り組みに相当の開きがある。定年制を持つ企業の2割弱は、すでに定年を65歳以上に定めている。これらの高齢者を基幹的な戦力とする企業では70歳までの雇用確保はそれほど難しくはない。中には、定年の廃止に動き出す企業もあるかもしれない。他方、定年を60歳とし、その後の5年間は非正社員の嘱託として採用する企業は、これを機に定年を延長し高齢者を戦力化しようとするタイプと、増える高齢従業員の配属先の確保すら困難なタイプに分かれるだろう。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数