金融庁の報告書が物議を醸している。年金生活をする無職の高齢者夫婦の場合、平均で毎月5万円ほどの生活収支赤字が生じるという試算から、30年で約2000万円の資産があらかじめ必要になると結論づけている。
公的年金について「その給付水準は今後調整されていく見込み」との一文も加わったことから、「年金不安を助長する」「2004年の年金改革時にうたわれた100年安心はウソだったのか」といった批判が起きた。参院選の争点になりかねない事態だ。
もっとも、報告書の試算は年金制度の将来的な見直しを見込んでいるわけでも、それを提案しているわけでもない。給付が「今後調整されていく」ことは、高齢化に応じてその伸びを抑えるマクロ経済スライドとして現行制度に織り込まれている。毎月5万円の収支赤字は総務省の「家計調査」にある平均的な高齢者世帯の現状を表しているにすぎない。現在の高齢者世帯は平均すれば2000万円程度の貯蓄があるから、この赤字が成り立つ面もある。このように報告書は「将来推計」というより「現状確認」に近い。
とはいえ、これほど批判が噴出した背景には年金制度への根深い不信があるだろう。老後に備えるにしても、所得が伸び悩む中、2000万円もの自助(蓄え)はできないとの不安もあるかもしれない。
報告書はつみたてNISA(少額投資非課税制度)などを活用した金融資産形成を強調しているが、ここで忘れられている資産がある。それが住宅だ。総務省の「14年全国消費実態調査」によれば、2人以上世帯の場合、住宅保有率は8割程度、住宅・宅地の資産価値は平均で2000万円を超えている。
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