南シナ海での中国による石油掘削に抗議する昨年5月の反中暴動後、政治的にも、経済的にも大きな打撃を受けたベトナム。日本では「ベトナム経済は順調」というイメージが強いが、それは日本側の願望の投影と感じられる。中国をはじめとする海外からの投資が激減、中国人観光客もストップされると、基幹産業がないベトナムの景気は低迷し、ここ1年人々は消費を控えていた。
あるベトナム人は「給料が上がっても、物価はそれ以上に上がっていて生活は厳しい」と漏らす。一方で昨年11月に初めてタクシー料金が引き下げられた。原油価格下落のためと説明されているが、他のアジア諸国で料金引き下げは見たことがない。
追い込まれたベトナム政府は、これ以上の経済低迷を避けなければならない。今年に入って、領土問題での対決姿勢を強めながらも、政府幹部の北京詣でが始まった。グエン・フー・チョン書記長が7月の訪米に先立って、習近平主席を北京に訪問したことも、その一環と思われる。
ベトナムは非常にしたたかな国だ。南沙諸島の問題も、日本での報道は「米中が激しく対立」といったふうだが、他国では「米中は軍事的衝突を避ける方向」と見ている向きが多い。ベトナムは中国との融和を図るにも、米国を巧みに利用し、有利な手打ちをもくろんでいたと思われる。
マクロは改善。ミクロは?
関係が改善されると、即座に経済が動き出すのが日本と違うところだ。「最近中国人観光客が戻ってきた」と旅行業者は喜びの表情で話す。中国企業が建設を請け負って16年に開業予定の高架鉄道の敷設も急ピッチで進み始め、車両もすべて中国製。もちろん有利な借款が付いている。今年初めにオープンしたハノイのノイバイ空港の新ターミナルが日本のODAで作られたことなど、現地では過去の話。中国の経済面での存在感がベトナムで確実に増している。
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