「抗戦飯」。日中戦争当時、中国の農民や兵士が食べていた携帯食のことらしい。それが北京の郊外で食べられると知り、2016年12月に訪ねた。
北京中心部から北東に約60キロメートル。行政区画としては北京市だが、一面にトウモロコシ畑が広がる。その中にあるのが焦庄戸(焦荘戸)村だ。何の変哲もないこの村が中国で脚光を浴びたのは、抗日映画『地道戦』のロケ地となったことによる。文化大革命の直前、1965年に中国で公開されると、延べ12億人が見たという。もっとも、文革当時に中国人が見られる映画は数えるほどしかなかったそうだが。ロケでは日中戦争中、焦庄戸村に張り巡らされた地下通路がそのまま使われたという。
抗日戦の拠点の一つであった焦庄戸村の農民は、地下通路を作り、ゲリラ戦に臨んだ。総延長は16キロメートル以上で、隣の村まで2キロメートルに及ぶものまで存在したという。地下通路のうち830メートルが、現在「焦庄戸地道戦遺跡記念館」として公開されている。かつては有料だったが、「全国愛国主義教育モデル基地」として08年以降は無料となっている。
北京の東直門バスターミナルからバスを乗り継ぎ、2時間近くで焦庄戸に着いた。ここには黒光りするメルセデスも走っていなければ、ピンヒールの女子も闊歩していない。地面に何かしらペッと吐く男性や、物売りの女性の叫ぶようなかけ声は、昔と変わらない。
アリの巣のような通路
記念館には無料で入れるが、身分証明書を出さなければならない。「日本人だけど」と言いながらパスポートを見せると、受付の女性はにっこり笑顔になった。しかし地下通路を案内してくれた中年女性は、職務だから仕方がないというオーラを出しながら、先にずんずん進んでいく。
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