オンラインと対面のハイブリッド化の実現を

「図表でみる教育2020年版OECDインディケータ」で、初等教育から高等教育までの教育機関向け公的支出の対GDP比のデータを見ると、OECD平均は4.1%。日本は2.9%で下から2番目だった。上位にはトップのノルウェー(6.4%)をはじめ、コスタリカ、デンマーク、アイスランドが名を連ねている。また、現在、大きなテーマとなっている少人数教育という文脈で見ると、日本の中学校1クラス当たりの生徒数32人という数字はOECD 平均の 23人を大きく上回っていることがわかる。

少人数教育については、存続が決まった教育再生実行会議でも論点の1つとなっている。初等中等教育ワーキング・グループでは、学校での密を回避するため、GIGAスクール構想を効果的に実現するため、個別最適な学びを実現するうえで教師の目が行き届くようにするため、などさまざまな文脈から少人数教育の必要性が挙げられている。

多様性が増す児童生徒へのきめ細かな対応を実現するうえでも、OECD並みの教員と教室の確保、財政支出の必要性にも言及されている。また、それぞれの施策について導入前と実施後のデータ検証の重要性も指摘。オンライン指導が有効な場面ではデジタル教科書の積極的な活用も提案されている。

ICT活用によるオンラインと対面のハイブリッド化による、協働的な学び、個別最適化の学びの実現も、ワーキング・グループの論点の1つだ。経済産業省から提出された資料「経済産業省『未来の教室』プロジェクト –教育イノベーション政策の現在地点–」では、「1人1台端末」の先進事例をつくる経済産業省の「未来の教室」実証事業、「1人1台端末」環境をつくる文部科学省のGIGAスクール構想に加え、先進事例を普及させる、経済産業省の「EdTech」導入補助金制度による、改革のプロセスを示している。

「EdTech」導入補助金とは、学校等教育現場にEdTechを試験導入する事業者に対し、その経費を補助する制度。 学校や、要件を満たすフリースクールは、今年度末まで費用負担することなく、授業でEdTech活用をトライアルできる制度だ。すでに申請は締め切られ、採択件数は69件、教育機関数は約4300校に達した。

例えば、ある学校向けプログラミングデジタル教材は「EdTech」導入補助金制度採択によって、38都道府県、約600校の中高生約11万人が活用できることとなった。しかし、この制度に手を挙げた公立学校の動向を見ると、地域間の開きが目立つ。300校を超える自治体がある一方、1桁の自治体も少なくない。EdTechを提供する事業者からは、学校が望んでも翌年度の予算化が確約できないという理由で教育委員会が同意しないケースの報告やセキュリティーの課題が挙がっているという。

経済産業省の提出資料の最後、今後に向けた課題に「教育関連データ活用に向けた教育・医療・福祉・就労にまたがるアーキテクチャの設計と、地方自治体レベルでの個人情報保護・セキュリティルール等の課題解決」が記されている。菅政権が掲げるデジタル化推進によって教育分野はどのように変わっていくのか。新型コロナウイルス感染症がもたらす「新しい日常」のあり方も教育現場の姿を変えていくだろう。現在、大切なターニングポイントを迎えているのかもしれない。

(写真:iStock)