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半藤一利「明治維新150周年、何がめでたい」 「賊軍地域」出身作家が祝賀ムードにモノ申す

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  • 半藤 一利 作家・原作・『昭和史』平凡社刊
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――子どもの頃、半藤さんのルーツである長岡で「薩長史観」の誤りを感じられたそうですね。

私の父の郷里である新潟県の長岡の在に行くと、祖母から教科書とはまったく逆の歴史を聞かされました。学校で薩長史観を仕込まれていた私が、明治維新とか志士とか薩長とかを褒めるようなことを言うと、祖母は「ウソなんだぞ」と言っていました。

「明治新政府だの、勲一等だのと威張っているヤツが東京にたくさんいるけど、あんなのはドロボウだ。7万4000石の長岡藩に無理やりケンカを仕掛けて、5万石を奪い取ってしまった。連中の言う尊皇だなんて、ドロボウの理屈さ」

いまでは司馬遼太郎さんの『峠』の影響もあり、河井継之助が率いる長岡藩が新政府軍相手に徹底抗戦した話は有名ですが、当時はまったく知りませんでした。明治維新とはすばらしいものだったと教えられていた私は、「へー、そんなことがあるのか」と驚いたものです。

また祖母は、薩長など新政府軍のことを「官軍」と呼ばず「西軍」と言っていました。長岡藩はじめ奥羽越列藩同盟軍側を「東軍」と言うわけです。いまでも長岡ではそうだと思います。これは、会津はじめほかの同盟軍側の地域でも同様ではないでしょうか。

そもそも「賊軍」は、いわれのない差別的な言葉です。「官軍」も「勝てば官軍、負ければ賊軍」程度のものでしかありません。正直言って私も、使うのに抵抗があります。

「明治維新」の美化はいかがなものか

――幼少期の長岡でのご経験もあり、「明治維新150年」記念事業には違和感があるのでしょうか。

「明治維新150年」をわが日本国が国を挙げてお祝いするということに対しては、「何を抜かすか」という気持ちがあります。

「東北や北越の人たちの苦労というものを、この150年間の苦労というものをお前たちは知っているのか」と言いたくなります。

司馬遼太郎さんの言葉を借りれば、戊辰戦争は、幕府側からみれば「売られたケンカ」なんです。「あのときの薩長は暴力集団」にほかならない。これも司馬さんの言葉です。

本来は官軍も賊軍もないのです。とにかく薩長が無理無体に会津藩と庄内藩に戦争を仕掛けたわけです。いまの言葉で言えば侵略戦争です。

そして、ほかの東北諸藩は、何も悪いことをしていない会津と庄内を裏切って両藩を攻めろ、法外なカネを支払え、と高圧的に要求されました。つまり薩長に隷属しろと言われたのです。これでは武士の面目が立たないでしょうし、各藩のいろんな事情があり、薩長に抵抗することにしたのが奥羽越列藩同盟だったわけです。

私は、戊辰戦争はしなくてもいい戦争だったと考えています。西軍の側が手を差し伸べていれば、やらなくていい戦争ではないかと。

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【県名にも表れている「賊軍」差別】

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