窪田:障害を本人だけの課題としてではなく、社会との相互作用として捉える必要がある、ということですね。その考えを、澤田さんはどのように具体化されているのでしょうか。
澤田:人と社会を、私は魚と水にたとえています。視覚障害のある息子を淡水魚とするなら、見える人を前提につくられた社会は海のようなものです。淡水魚に海で泳ぐよう求めるのではなく、その魚に合う川をつくればよい。環境を変えれば、魚はそのままでも泳ぎ始めます。
窪田:なるほど。その人に合った環境を提供するということですね。実際に、その考え方を形にしたスポーツの例はありますか?
テクノロジーでバリアをなくす
澤田:はい。例えば、心臓病のある少年は、継続して運動することが難しく、体育で休んでいると「サボるな」と言われた経験があったそうです。そこで、彼に合うスポーツとして、ミズノ株式会社と「500歩サッカー」を開発しました。
窪田:「500歩サッカー」は初めて伺いました。どのようなルールなのでしょうか。
澤田:参加者全員が、歩数の残量を表示するデバイスを背中につけます。動くほど数字が減り、ゼロになると退場です。一方で、立ち止まって休憩すると歩数が回復します。心疾患のある人もない人も、参加者全員がこまめに休む競技ですから、特定の誰かだけが目立つことはありません。
窪田:参加者全員が、心疾患のある少年が置かれた状況を体験しながら、同じ競技に参加できる仕組みなのですね。
澤田:はい。今はスマートフォンやアプリを使えば、こうした仕組みを以前より低いコストでつくれます。20年、30年前なら大きな開発費が必要だったことでも、アプリを活用すれば数万円ほどで試せる。生成AIが発達した今は、魚に合わせて水をつくる可能性が、これまでになく広がっています。
窪田:テクノロジーを活用してバリアをなくしていく。その発想は、テクノロジーの利用法として非常に意義深いと感じます。



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