全国に397ある信用金庫と信用組合のうち、2026年3月期の自己資本比率が最も高かった稚内信用金庫。64.43%という突出した数字を誇り、全国屈指の健全性で知られていた。
ところが9月30日、そんな評価を覆す事態が起きる。稚内信金が信金業界の中央機関である信金中央金庫から200億円もの資本支援を受け入れたのだ。なぜ「超優良」だったはずの信金が資本支援を仰いだのか。その答えは、金利上昇で膨らんだ国債の含み損だ。
稚内信金が26年3月期に抱えていた有価証券全体の含み損は835億円。自己資本534億円をはるかに上回っていた。それでも自己資本比率が64%だったのは、算定方法に理由がある。14年3月期から適用された新国内基準で、有価証券の含み損益については自己資本比率に反映しないというルールになっているからだ。
ただし、自己資本比率が最低所要水準の4%を超えていても、含み損を控除して債務超過状態になることが明らかな場合には、金融庁が「早期是正措置」として業務停止命令を発動できる。こうした事態を回避するため、信金中金が資本支援に乗り出したのだ。
金利上昇が「逆風」に
24年3月にマイナス金利政策が終わり、金融機関の悲願だった「金利ある世界」が定着した。26年3月期は3メガバンクグループともに連結純利益で過去最高益を更新。地方銀行も全95行中、85行が増益を果たした。だが信金と信組の決算を見ると、まるで様相が異なる。
東洋経済は全国397の信金・信組のうち、ディスクロージャー誌を入手できた394先の26年3月期決算を独自集計した。すると信金254先のうち減益決算が118先(46.5%)に上り、信組も140先のうち60先(42.9%)が減益決算だった。赤字に陥った信金・信組も計30先に上っている(下表)。

金融機関にとって金利上昇は追い風のはず。にもかかわらず信金・信組で減益や赤字決算が相次いでいるのは、待ち望んでいたはずの利上げが逆に収益を圧迫する要因となっているためだ。
金利上昇局面では、まず預金金利が一斉に上がり調達コストを押し上げる。そのため貸出金利や有価証券運用益をそれ以上に拡大できなければ利ザヤは縮む。この点、貸し出しではTIBOR(東京銀行間取引金利)などに連動する市場金利連動型が多いほど、日銀の利上げが貸出金利に反映されやすく、利ザヤを確保しやすい。
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