会見ではV9以降、日本一連覇がなく「本当の意味での黄金時代は、V9以外来ていない」という現状認識を述べたあと、だからこそ、巨人の黄金時代を作りたいと熱く語った。
さらに「ジャイアンツは常に紳士たれ」という言葉を引き合いに出し「やっぱりジャイアンツの選手は感じがいい、ファンに優しい、そう思ってもらえる選手であるよう、しっかり私自身がそれを体現していきたい」と語るなど、その言葉はジャイアンツ愛、ファン愛にあふれていた。
また、会見後に出演した日テレ系「news every.」では織田について「この立場になったので、『初志貫徹してください』とはなかなか言いづらい」と率直に述べたうえで、巨人の魅力や具体的なプランを伝え「彼の心が動くような何かプランを提示して『ジャイアンツに行くのもいいな』という気持ちに少しずつでも動いてもらえるようにしていく」と話した。
アメリカで挑戦したいという織田の意思。巨人の監督として戦力の獲得を期待するファンの思い。両者の希望は必ずしも一致しない。それでも松井は、どちらかを軽んじるのではなく、それぞれに誠実な言葉を選んでいる。
松井は02年、巨人を離れメジャーリーグに挑戦する際の会見で、ファンへの思いを質問されると「裏切り者と言われても仕方がない」などと語った。
当時、メディアは最終的に松井が巨人に残留すると踏んでおり、巨人ファンも残留を願っていた。そんな中でのメジャー挑戦。松井はファンの気持ちをおもんぱかってか、会見で終始笑顔はなかった。ファンを大切にすることで知られる松井氏らしいエピソードだ。
巨人は自分の故郷
そうであったからこそ会見冒頭では「あの日はまったく笑顔を出すことができせんでしたが、今日は満面の笑顔で、自分の故郷に戻ってきたつもりです」と、巨人を自らの故郷と話した。
実際、メジャーに渡った後も臨時コーチとして若手の指導にあたるなど、彼の巨人への思いが薄れることはなかった。自らの夢を追って海を渡りながらも、古巣への愛情を持ち続けてきた松井だからこそ、ファンの期待も、織田の意思も、痛いほど理解できるのだろう。そこには一人の人間としての誠実さを感じずにはいられない。
監督としての松井氏の手腕は、これから試されることになる。いかに人格者であっても、それだけでチームを勝利に導けるほど、プロ野球の世界は甘くない。
それでも自分の立場だけでなく、相手がどう感じるか、周囲にどのような影響が及ぶかまで考え、言葉を選ぶ。そんな細やかな配慮に、令和のリーダーとしての資質を感じざるをえない。
やはり松井秀喜には、期待したくなる。


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