その背景には、区内の公共施設を整備するための土地不足問題があった。
「渋谷区には必要な施設がまだまだたくさんあるのですが、そもそも区内には、それらを建てられる場所がもうないんです。だからこそ、あそこの貴重な広い土地を活用したかったんです」
橋本氏が挙げたのは、特別養護老人ホームや障害者のグループホーム、子どもが屋内で遊べる場所などだ。見積もり合わせで土地を取得できていれば、2023年度には施設が整備される予定だった。定員140人以上の特別養護老人ホームに加え、デイサービスや認知症高齢者グループホームなども想定されていたという。
さらに、旧千駄ヶ谷住宅跡地には、渋谷区が抱えるもうひとつの問題解決にも役立つ可能性があった。それは、老朽化した学校や公共施設の建て替えに伴う、仮設校舎などの設置場所だ。
「現在、区内の学校校舎も、一般的な公共施設も、老朽化による建て替えを進めています。ですが、建て替えをしている間の仮設校舎を建てる土地がないんです。仕方がないので、区内の公園やスポーツセンターのグラウンドに仮設校舎を設けて、なんとかやりくりしているのですが……。
まるでパズルのように、ある学校の建て替えが終わったら、次に建て替えをする学校の子どもたちがそこへ移り、終わったらまた次の学校の子どもたちがやってくる、というのを繰り返しています。それに、仮設校舎への通学期間は通学距離も延びるため、スクールバスを出す必要もあります」
その一例が、広尾中学校の建て替えだ。同校は2025年夏ごろから工事が始まり、現在、生徒たちはスクールバスなどを利用して、青山に設けられた仮設校舎に通っている。新校舎は2028年夏ごろに完成する予定だ。
なぜ公共施設の土地確保が難航するのか
では、なぜ渋谷区では、公共施設を建てるための土地を確保するのがそんなにも難しいのか。


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