価格改定の背景にはガスそのものの調達コストだけでなく、容器の維持管理や耐圧検査、物流などのコスト上昇がある。つまり、酒税という一つのコストだけを見れば、ビールそのものは確かに安くなるが、生ビールを店で提供するために必要なコストまで含めれば、減税分がそのままビールの販売価格につながるわけではない。
飲食店には家賃があり、人を雇えば人件費が発生する。営業時間中は照明や空調、冷蔵庫などの電気代もかかる。料理を提供するためには食材費だけでなく、調理や接客のための人件費も必要になる。飲食店は現在、人件費、光熱費、食材費、物流費など、食材以外にも多くのコスト上昇に直面している厳しい状況だ。
しかしそれらのコスト上昇分を価格に反映させれば、客離れが起こる可能性があるため、値上げになかなか踏み切れない店も多い。値上げをしたいのにできない、というジレンマの中で、ビールの酒税が下がったからといって、生ビールの値段を簡単に下げることはできないのだ。
ビール大手4社にカルテルの疑い
ここで、ビールの仕入れ価格について懸念すべきニュースが入ってきた。10月7日、公正取引委員会は、アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリーの大手4社について、ビール類の価格をめぐるカルテルの疑いで調査に着手した。
報道によると、各社の営業担当者らは、値上げ幅などを事前に調整し、その結果を一覧表にして共有していた疑いがある。さらに、10月10日には、公取委の聴取に対して営業担当者らが価格調整を認めていると報じられた。
このカルテル疑惑は酒税改正とは別の問題であり、現時点では独占禁止法違反が認定されたわけでもなく、調査の行方を見守る必要がある。
そもそも、飲食店における生ビールの価格はどうやって決まっているのだろうか。
酒税はビールメーカーの段階で課税される。その減税分がメーカーの生産者価格に反映され、さらに卸価格、飲食店の仕入れ価格へと伝わっていく。
飲食店が仕入れているビールの価格が、ビール市場のシェアをほぼ独占している大手4社の価格調整によって決められていたのだとすれば、飲食店にとっても決して他人事ではない。酒税が下がっても生ビールの販売価格を簡単に下げられない飲食店にとって、そもそもの仕入れ価格がどのような競争環境のもとで決まっていたのかは、極めて重要な問題である。市場で大きな力を持つ企業だからこそ、価格決定の独立性と透明性が問われるのだ。


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