3作目は『BILLY BAT』(浦沢直樹、ストーリー共同制作・長崎尚志、講談社)です。
この作品は、あらすじを説明するのがとても難しいです。物語は1949年のアメリカから始まります。人気コミック『ビリーバット』を描く日系人漫画家ケヴィン・ヤマガタが、自分の描いたコウモリのキャラクターを「日本で見たことがある」と言われ、その真相を確かめるために戦後の日本へ渡ります。そこから、歴史の裏に潜む「コウモリ」をめぐる壮大な謎に巻き込まれていきます。
この作品の面白さは、紀元前から近未来まで、とても長い時間の中を物語が行き来することです。時系列はばらばらに並べ替えられていて、読み進めるうちに一つずつ点と点がつながっていきます。
登場する歴史上の人物も、とにかく多彩です。イエス・キリストとユダ、フランシスコ・ザビエル、服部半蔵や明智光秀、アインシュタイン、ヒトラー、白洲次郎、ケネディ大統領。描かれる出来事も、伊賀の乱、関東大震災、下山事件、ケネディ暗殺、アポロ11号の月面着陸、アメリカ同時多発テロと、教科書に載る大事件がずらりと並びます。
例えば作中では、1922年に来日したアインシュタインが神戸で謎のコウモリの絵を見せられます。アインシュタインの来日は史実ですが、そこにフィクションが自然に入り込んでくるのです。「この事件の裏には、実はこんなことがあったのではないか」。史実の「隙間」に物語を差し込んでくるので、読み終わった後に本当の歴史を調べたくなります。
想像がどんどんふくらむ中に、歴史の面白さがある
浦沢直樹さんの作品では、『MASTERキートン』も歴史を学ぶのにぴったりです。ただ、『BILLY BAT』のほうが難しく、そのぶん歴史上の未解決の謎や、都市伝説のような部分にまで踏み込んでいるので、想像がどんどん広がります。
下山事件やケネディ暗殺は、今も多くの説が語られている出来事です。漫画をきっかけに「実際はどうだったのか」と調べ始めれば、それはもう立派な歴史の勉強です。
ストーリーはたしかに難しいです。でも、それ以上に面白い。全20巻、ぜひ一気に読んでみてください。
今回紹介した3作品に共通するのは、歴史を「自分ごと」として感じさせてくれることです。
『ドリフターズ』は、技術が世界をどう変えるのかを過去の人の目線で見せてくれます。『レキアイ!』は、偉人を等身大の人間として感じさせてくれます。そして『BILLY BAT』は、歴史の謎に向き合う好奇心をかき立ててくれます。
歴史は暗記科目だと思われがちですが、本当は人間の物語の積み重ねです。
漫画で物語として味わってから教科書に戻ると、同じ文章がまったく違って見えるはずです。
ぜひ手に取ってみてください。



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