中でもピアノはメキメキと実力をつけていった。ピアニストを志し、県外の音大への進学を希望していたが、高校2年生のときに父の会社が傾き始める。「実家から通える大学を」と両親に促され、地元大学の教育学部に進学した。卒業後は東京にある憧れの企業への入社を勝ち取るも、社会の厳しさを突きつけられることになる。
「当時、話題になっていたマーケティング企業に新卒1期生として入社しました。業務内容は法人営業の新規開拓で、テレアポをして、提案に行き、資料を作るという。私以外の同期は入社前にインターンをしていて、後れを取ったスタートでした。『負けていられない!』と泊まり込みで仕事に臨みました」
田舎から出てきたばかりの22歳。当時はスマホもなく、印刷した地図を片手に都内を歩き回った。やってもやっても仕事が終わらず、睡眠時間は週に約6時間。そのがんばりは報われ、成果も出始めていた。しかし、3カ月が経ったある朝、急に起き上がれなくなった。
「実は、入社から3カ月で13キロ太って45キロから58キロになっていました。時間もお金もなかったので、すぐに食べられて手頃なハンバーガーやコンビニ弁当ばかり食べていたからです。気力で続けていましたが一気に限界がきたようで……。心身の不調から退社を決めました」
幼い頃から「やれば何でもできた」彼女にとって、初めての挫折だったのかもしれない。その後、「ここから立て直していくぞ」と転職して新たな道を歩み出すも、いくつもの「想定外」に直面し、栢原さんの人生は厳しさを増していく。
父、祖父が相次いで急死…
2社目として選んだのは、スカウトで入社した人材コンサルティング企業。マーケティング部署に所属し、ウェブ制作やマーケティングを学ぶなかで、働く楽しさを見出していった。一方で、周囲との人間関係はうまくいかず、壁にぶつかった。
「学びたい一心で男性上司と親しくしていたら、『栢原ちゃん、経験人数は?』みたいな質問をされるようになって。『仕事を教えてあげるから』と言われて朝早く出社しても、セクハラのような話ばかり。全くの期待外れでした。そのうち、今度は女性上司から仕事を振られなくなってしまって。男性社員が多い会社で、かわいがってもらっていたのですが、それが彼女の気に障ったのかもしれません」


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