イギリスの有名な推理作家アガサ・クリスティ(1890~1976年)の作品に「鏡は横にひび割れて」(橋下福夫訳、早川書房、2004年)という作品がある。
これはある女性が、ちょっとしたささいな会話の中で、突然過去の記憶が思い起こされ、そこから殺意が生まれるというものだ。
記憶の底から突然浮かび上がる過去
過去は忘れるに越したことはないが、突然記憶の底から浮かび上がる過去がある。それは2026年9月の国連総会で、高市早苗首相が『国連憲章』から「敵国」条項の削除を日本が要求した際の問題にも言える。
削除要求は以前からもあったことであり、今では敵国条項など問題にされていない。しかし、文書は存在する。すでに歴史的文書化しているものを書き換えることなどできることではない。
まして被害を受けた国には、忘れられない記憶として刻まれているのである。そしてそれは突然、2つの国によって思い起こされたのである。中国とアメリカであった。両国は第2次世界大戦中は同盟国であったというのは、歴史的に誰もが承知していることだ。しかも、その同盟こそ「国連」そのものであったのである。これこそ事の本質である。
1941年12月の日本による真珠湾攻撃からひと月もたたない42年1月1日、ワシントンに集まったアメリカ、イギリス、中国、ソ連の代表が、ナチス・ドイツと日本のファシズムと戦うために連合国同盟を形成した。
その名前は奇しくも連合国(United Nations)であり、やがてそれは国連(United Nations)になる。それ以前の同盟は、連合国の場合、Allied Powersだった。
戦後日本を統治した連合国は再びAllied Powersとなり(連合国最高司令官、通称SCAPの最期のAPはAllied Powersである)、日本国民は連合国の統治を受ける。日本語の名称が違うので国連とは別物だと考えられていたが、実は同じものであったのだ。
1942年1月1日の連合国同盟の文書にはこう書いてある。
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