実は、こうした夫婦は珍しくありません。家計相談を長年受けてきた筆者は、このような事例を数多く見てきました。
お金について話し合おうとすると、なぜか相手が怒る。あるいは、黙り込む。「またその話?」と嫌そうな顔をされる。
こうした夫婦のすれ違いを考えるうえで、まず知っておきたいのは、お金の話が単なる「数字の話」ではないということです。
その人がどんな家庭で育ってきたのか。何にお金を使うと幸せを感じるのか。どの程度の貯金があれば安心できるのか。将来、どんな暮らしをしたいと思っているのか。
お金の使い方には、その人自身の価値観や人生観が色濃く表れます。
だからこそ、話した側に責める意図がなくても、「なんでそんなことにお金を使ったの?」という言葉は、相手にとっては「あなたのお金の使い方は間違っている」という否定に聞こえることがあります。
今回の夫婦もそうでしょう。夫の中では、「300万円あった貯金が100万円になった」という事実の説明でした。しかし妻の中では、「あなたとの新婚旅行のせいで200万円減った」というメッセージに変換されてしまったのです。
お金の話は、それほど感情と結びつきやすいのです。
過去ではなく「これから」の話をする大切さ
では、お金について話し合うたびに険悪になる夫婦は、どうすればいいのでしょうか。
1つの方法として私が勧めているのが、「2人の共通目標」を置くことです。
今回の夫婦であれば、「新婚旅行で200万円も使った」「奨学金が240万円も残っている」と、過去の出費や負債から会話を始めるのではありません。
たとえば、「3年後までに、2人で500万円貯めよう」という未来の目標から話を始めます。
家を買いたい。子どもの教育費を準備したい。毎年旅行に行きたい。目標は夫婦によって違って構いません。
大切なのは、「あなたが使いすぎた」ではなく、「私たちはこれから何にお金を使いたいのか」を話すことです。
私がおすすめしているのは、パートナーを「変えよう」としすぎないことです。自分の不満を直接相手にぶつけるのではなく、「2人の共通目標・共通課題」として提示する。
「なんで貯金していなかったの?」と聞けば、相手は自分を守ろうとします。
一方で、「3年後に500万円貯めるなら、これからどうしようか」と聞けば、2人は同じ問題を一緒に考える側に立つことができます。
夫婦のお金の話で重要なのは、過去の責任を決めることではありません。
「これから2人でどうするのか」
話し合いの向きを未来に変えることが、お金について話せる夫婦になる最初の一歩なのです。


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