「マンションにはディスポーザーが標準装備されていて、その接続に対応したキッチンしか選べないという制約があって。好きなメーカーのキッチンに丸ごと替えることが、そもそもできなかったんです」
そこでTSUNさんは、譲れない部分は死守しつつ、設備や収納をひとつずつ見直していった。譲らずに残したのは、見た目を左右する木目の面材や白い人工大理石の天板、大きなカウンター収納、食洗機、キッチンそのもののサイズだ。一方、最新機能や収納設備は、本当に必要かどうかを改めて考えた。
たとえば吊り戸棚は、キッチンメーカーのものをやめることで19万6000円を削減。代わりにIKEAの吊り戸棚を3万3000円で購入し、施主支給にした。これが大きなコストカットとなったうえ、使いやすさも向上したという。
ビルトイン浄水器とグースネック水栓も取りやめ、23万3000円を削減。代わりに1万6000円のINAXの浄水器一体型水栓を自分で購入した。背面の家電収納やゴミ箱ストッカーもなくして14万円を削り、2万円で可動棚を造作してもらった。
さらに10年間掃除不要という最新型のレンジフードをひとつ下のグレードにして、8万6000円減。IHクッキングヒーターも3口すべてIHのタイプから、2口IH+ラジエントヒーターに変更して2万円を削った。背面カウンターも、引き出しを開き戸にするなど仕様を見直している。
ショールームには何度も足を運び、見積もりも5回ほどつくり直してもらった。こうした見直しを重ね、約300万円だったメーカー定価を200万円強まで下げた。
「100万円分も諦めたことがある割に、使い勝手が悪くなったとか、あれは残したほうがよかったという後悔はひとつもないんです。どうしても譲れない部分は残せたんだと思います」
施主支給品を加えると、キッチンだけで当初の予算を15万円ほどオーバーしたのだが、ほかの部分で費用を調整して予算内に収めた。
暮らしは変わらない。でも、家で感じる不満は減った
リノベーションから10年以上が経った。それでも、暮らし方そのものが大きく変わったかというと「実はそうでもない」とTSUNさん。在宅で仕事をすることも、家で過ごす時間が長いことも、基本的には以前と変わっていない。
「生活のスタイルを変えないためのリノベーションだったともいえますね。新しい暮らしをはじめたかったんじゃなくて、今までの暮らしのまま、快適に過ごせる家にしたかったんです」
実際、以前よりも家のなかで不便やストレスを感じることは少なくなったという。その感覚について、TSUNさんは掃除機を例にこんな話をしてくれた。
「コード付きの掃除機を使っているときは、多少面倒だなと感じながらも『そういうもの』と思って当たり前のように使っていましたが、コードレスに替えたら快適すぎて目から鱗。コードレスに替えて初めて、コードがあることのストレスに気づきました」


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