運動以外の行動にも効くのか、と重ねて聞くと、Bolton氏は肯定した。準備度は睡眠関連、活動関連、そして新しいRecovery指標を含むバイタルの3要素を評価し、そのすべてが毎日のスコアに積み上がる。
Appleの健康・フィットネス機能全般に共通する方針として、運動の習熟度を問わずあらゆるタイプの利用者に向けて作っている、とも語った。マラソンに向けて練習しているアスリートにも、仕事や家庭のストレスを抱えるごく普通の生活者にも価値がある。「今夜は時間通りに寝よう」「今日は活動量を抑えよう」という気づきを与えられれば十分だ、という位置づけである。
算出の仕組みについても聞いた。準備度は過去7日間のデータを使うが、出てくるのは1日単位のスコアだ。Bolton氏によれば、指標ごとに見ている時間の幅が異なる。睡眠は前夜の睡眠と直近7日間の傾向の両方、活動量は前日と当日に加えてもう少し長いスパン、バイタルは前夜と当日。指標ごとに違う時間軸で、直近の影響を評価しているという。
Dooley氏はこれを補足し、7日間はあくまでその人の平常値を確立するための期間で、指標によってはそれより長い期間を遡り、その日の状態についてより踏み込んだ示唆を出していると説明した。
平常値を作るのに1週間ほどかかるという設計自体は、この分野では珍しくない。GoogleがFitbitとPixel Watch向けに提供している準備度スコアも、7日間の装着で基準を作る。
違いが出るのは材料の選び方で、Googleのスコアが睡眠・心拍のゆらぎ・安静時心拍に絞って「どれだけ回復したか」を見るのに対し、Appleは活動量まで含めて「今日どれだけ動けるか」を示す。SamsungがGalaxy WatchとGalaxy Ring向けに提供するEnergy Scoreは睡眠・活動・安静時心拍・安静時のゆらぎを束ねる構成で、発想としてはAppleに近い。
体の疲れと心の疲れ、両方拾えるか
筆者が最も聞きたかったのは、ここだった。体が疲れているかどうかは本人にも比較的分かりやすい。だが精神的な疲労は自覚しにくい。しかも日本では、精神的に辛くても我慢して頑張ってしまう傾向が、他国より強いかもしれない。ワークアウトを一切せず、1日中ストレスの多い会議に出続けただけの日でも、準備度はそれを拾えるのか。そう尋ねた。
Dooley氏は、身体と精神はつながっており、それはバイタルに表れる、と答えた。ストレスの多い日には心拍が上がったり、Recovery HRVが低下したりする。それは体がストレス下にあって回復力が落ちている状態、あるいは睡眠の質が悪い状態を示している場合がある、という説明だった。そのうえで、準備度が優れているのは、体が発するさまざまなサインを1つにまとめてくれる点だと語った。


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