また「曲の充実度」という観点から見ても、現在の通信カラオケ機器は「DAM」と「JOYSOUND」の2大ブランドに集約されている。そうなれば自然と、収録曲や採点機能などで店舗独自の差をつけづらいわけだ。
そして3つ目が、カラオケ業界の市場規模が、最盛期に比べて縮小していることだ。
公益財団法人日本生産性本部が発行する『レジャー白書』によると、カラオケボックスの市場規模は、ピーク時の1990年代後半から2000年代初頭にかけて、約6000億円規模を維持していた。一方、全国カラオケ事業者協会の『カラオケ白書2026』によれば、2025年度は3462億円。コロナ禍から回復しているものの、長期的に見ればピーク時を下回る。
市場縮小に加え、賃料や人件費の上昇が重なれば、小規模事業者ほど経営余力を失いやすい。それだけ大手が寡占化していく流れが進むと考えられる。
平均客単価600円台、破格プラン導入の背景
では、差別化が図りにくい業界の中、コシダカHDはいかに抜きん出たのか。
2020年から23年にかけての大量出店は先に述べた通りだが、コロナ禍以前と比較すると1店舗当たりの売り上げも上がっており、拡大する店舗網に伴い、店舗当たりの売上高や利益も増えている。
コシダカHDのカラオケ事業のセグメントを見ると、2019年8月期は、546店舗(国内525・海外21)で、売上高357億3200万円、営業利益は45億1800万円。これが2025年8月期は、728店舗(国内703・海外25)で、売上高671億6200万円、営業利益は124億500万円に着地した。まとめると、店舗数が約1.3倍になったのに対して、売上高は1.9倍、営業利益は2.7倍に拡大。単純計算で割ると、1店舗当たりの売上高と利益も増えている計算になる。
好調を支えた一因が、10年ほど前から展開してきた学生向けプランだ。
2015年から2人以上の高校生は室料が平日無料になる「ZEROカラ」を、2018年からは大学生・短大生・専門学生を対象に週末以外の18時以降フリータイムでドリンクバーが無料になる「まふ(まねきねこのフリータイム)」を開始。さらに「飲食物の持ち込み自由」を導入したのも、チェーン店としてはまねきねこが先駆けとされる。
コシダカHDによれば、ZEROカラを利用する顧客の平均客単価は600円台。一見、採算度外視に見える施策だが、若年層を囲い込む狙いがあった。
「ZEROカラを利用する顧客の平均客単価は600円台だが、これが大学生になると1000円近くに、全社の平均客単価で均すと1500円まで上がる。当時2010年代は、他社が学生に特化したマーケティングを行っていなかったことも、現在の活況につながった」と腰髙社長。言い換えれば、「ZEROカラ」や「まふ」といった格安プランは先行投資といえる。
コシダカHDでは、このマーケティングを「カムバックサーモン戦略」と呼んでいる。淡水で育てた稚魚を海水に放流して、大型の成魚になって川に戻ってくる循環をなぞらえつつ、「この作戦が大成功した」と振り返る。同社の試算では、全国の高校生の2人に1人以上が、まねきねこのアプリ会員となっているとされ、多くの“稚魚”を抱えたことが躍進につながっている。


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