急成長する電子の黒子が、日本の老舗コンタクトレンズメーカーを買いに来た……でもなぜ?
一般にはほとんど話題になっていないが、極めて興味深い株式公開買い付け(TOB)が進んでいる。買い付け者は中国の電子機器受託製造(EMS)大手、立訊精密工業(ラックスシェア・プレシジョン)、ターゲットとなっているのは東証スタンダードに上場しているシードである。
ラックスシェアがTOBを発表したのは8月26日の夕刻、TOB価格は795円で、前日終値(538円)に対して47.8%、直近1カ月~6カ月の平均株価に対しても50%前後のプレミアムが付されている。シードはTOBに賛同し、自社の株主にTOBに応募するよう推奨している。
このTOBは非公開化を目指すものだが、ラックスシェアの買い付け下限は540万8800株(17.89%)とする(上限は設定していない)。これはシードの筆頭株主で、実質的に48.8%を保有する新井隆二氏(ビックカメラ会長、1985年にシード社長に就任し約15年間経営を担った)はこのTOBには応募せず、ラックスシェアとの共同経営を予定しているため。
ラックスシェアが17.89%分の株を買い付けることができれば、新井氏保有分と合わせて総議決権数の3分の2以上を確保することになる。臨時株主総会を開き、株式併合を通じたスクイーズアウトを経てシードは上場廃止となる。最終的にはシードの議決権所有比率を新井氏51%、ラックスシェア49%となるように調整するという。
アップルの新・右腕
ラックスシェアという企業は、多くの日本人にとって馴染みが薄い。だがハイテク産業では誰もが知る急成長企業だ。
創業者の王来春氏は、台湾・鴻海精密工業の出稼ぎ労働者から身を起こした苦労人。2004年に創業した後、鴻海と同様にアップルの受注を得てめきめきと大きくなった。鴻海は「iPhoneの組み立て屋」として広く知られるが、ラックスシェアはAirPodsやApple Watch、Vision Proといった製品の製造を主に担っている。アップルにとっては鴻海に続く新たな「ものづくりの右腕」である。
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