コト消費が常に最新となる理由
感性消費、体験消費、トキ消費など、ここ数十年のマーケター言説は、新たな「○○消費」を生み出し続ける歴史であったと言っても過言ではありません。そしてこの中でもコト消費は、数十年の歴史を持ちながらも、新規な事象を表す言葉として未だに使われ続けているという点において抜きん出ていると言えます。
たとえば、1989年の日経流通新聞には以下のような記述があります。「かつての一点豪華主義のモノ消費から、時間や空間などソフトに積極的に投資するコト消費へと流れている」。こう書かれてから35年以上が経過した後、後継紙である日経MJでは2024年に、「消費者の行動は2010年代に「モノ消費」から「コト消費」が注目されるようになった1」と記されています。
コト消費は、常にその時代が訪れていると語られるという意味において、現代社会における「神話」として機能しているわけです。
しかも興味深いことに、コト消費は新規な概念ではなく、既知のものとして常に呼び出されるという特性を持ちます。この言葉がマーケター言説の中に本格的に現れるのは1980年代中盤ですが、管見の限り、それは常に何らかの注釈なしに用いられ、自明なものとされてきました。
つまりコト消費とは、その内実について詳細に定義されることなしに、いつとはなしに利用されるようになった言葉なのです。


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