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「コト消費」が半世紀にわたり今のトレンドを示すものとして用いられる訳…なぜ「○○消費」は繰り返し語られ続けるのか

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コト消費
意味の曖昧な「コト消費」という言葉が使われ続ける理由とは(写真:NOV/PIXTA)
  • 林 凌 武蔵大学准教授
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その最も極端な例として、ここでは博報堂生活総研の研究員が1985年に書いた、ある記事を見てみましょう。そこで彼は、戦後日本における消費のモードが「モノ消費の時代、サービス消費の時代、コト消費の時代、感性消費の時代へと流れてきました2」と主張します(図2)。

(画像:『新・消費論』より)

この彼の記述は、コト消費がマーケター言説内で用いられた、筆者の知る限り最も初期の事例なのですが、ここでコト消費は、最新の動向である「感性消費」の前触れとしての役割しか与えられず、あたかも過去の消費形態を示す言葉のように紹介されています。

これは、当時の博報堂や電通が「感性消費」を一種のバズワードとして売り出していたからですが――先の記事のタイトルは「大衆から分衆の時代へ」であり、同年の1985年に博報堂生活総合研究所より出版された『「分衆」の誕生――ニューピープルをつかむ市場戦略とは』をなぞり返しています――この事実はある示唆を私たちに与えます。

それは、コト消費はマーケター言説への本格的な登場期において、特定の主体によりプッシュされたとは見なし難い言葉である、ということです。

コト消費は1980年代中盤に一般に使われるようになって以降、誰ともなしに常識となった。他方、「感性消費」に代表される、当初からバズワードとなることを企図して作られた「○○消費」は、多くの場合すぐ廃れてしまった。それはなぜなのでしょうか。

「○○消費」という言葉には共通項がある

このことを考えるうえで重要なのは、こうした「○○消費」の類似点です。

そもそもこれらの言葉は、一見するとまったくまとまりがないように見えますが、ある一つの共通項を有しています。それは、これらがいずれも「モノ消費ではない消費」を指し示すために作られた言葉だ、ということです。

先程引用した記事には、以下のような記述があります。

モノ消費の時代はモノの量によって差別化を志向しました。〔昭和〕49年ごろから始まったサービス消費の時代はモノに代わってサービスそのものに魅力を感じた時代でした。それが〔昭和〕53年ごろにはコト消費の時代へ入りました。イベントに関心が引き寄せられました。萩本欽一のバラエティーショーが全盛期だったころです。そして〔昭和〕58年ころから感性消費の時代と言われました。感性による差異化を楽しむようになってきたわけです3

この説明が、博報堂生活総合研究所の公式の見解と見なせるものかどうか。もっとも、それはここでは問題ではありません。先述した『「分衆」の誕生』において、類似の時代区分や説明は特に採用されていないことを示すだけで、とりあえずは十分でしょう。

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