人は絶対額だけで生活水準を決めているわけではありません。自分がいる集団の中で何が標準か、という感覚にも引っ張られます。昨日まで十分だったものが、環境が変わっただけで「ちょっと恥ずかしい」「もう少しいいものを持つべきだ」と感じ始める。
そこに「仕事のため」「ストレス発散」「昇進祝い」「頑張った自分へのご褒美」といったもっともらしい理由が加わります。こうして収入の増加を追いかけるように、支出も増えていくのです。
重要なのは、年収と資産は別物だということです。
年収が500万円から600万円になっても、増えた100万円を使えば、資産はほとんど増えません。年収800万円の人が年収500万円の人よりお金持ちとは限らないのは、このためです。
真中も収入を上げることには成功しました。ところが数年後、銀行口座を見れば貯金は100万円前後のまま。稼ぐ力は高まったのに、増えた分をそのまま使っていたからです。
つまり、年収アップには2つの見方があります。ひとつは「使えるお金が増えた」。もうひとつは「将来に残せるお金が増えた」。
前者だけで考えると生活水準が上がり、後者で考えると資産形成のスピードが上がります。同じ昇給でも、数年後の姿は大きく変わります。
そして、この状態が続くと、さらに深い罠にはまります。
一度上げた生活水準は、下げるのが難しい
一度上げた生活水準は、簡単には下げられません。経済学では、こうした性質を「ラチェット効果」と呼びます。ラチェットとは、一方向にしか回らない歯車のこと。一度味わった快適さや豊かさが自分の中の新しい基準になると、収入が落ちても支出だけは元に戻りにくくなります。
その理由は大きく「見栄」と「慣れ」です。


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