生活水準を下げれば、周囲から「前の暮らしを維持できなくなった」と思われるかもしれない。一方で、一度知った快適さは自分の基準にもなります。上質なスーツを着慣れた後に安い生地へ戻る、便利な住環境から不便な部屋へ移る。以前なら何とも思わなかった選択が、今度は「我慢」に変わります。
だから、収入が減ったときに初めて節約しようとしても苦しい。すでに生活水準が固定されているからです。
最も警戒すべきは「昇給した直後」
では、どうすればライフスタイル・インフレーションを防げるのでしょうか。
ポイントは、収入が増えたときこそ支出を増やさないことです。
昇給前に月25万円で暮らしていた人が、手取りで月3万円増えたとします。この3万円を「使っていいお金」と認識した瞬間、外食、服、趣味、旅行などに自然と吸収されていきます。
反対に、増えた分を最初から「なかったもの」として扱えば、生活水準を変えずに資産形成へ回せます。
そのためには、意志の力だけに頼らないほうがいいでしょう。給与が入ったら先に別口座へ移す、あるいは積立投資などで自動的に振り分ける。手元に残ったお金の範囲で暮らす仕組みを作るのです。
本書でも、使うのを我慢して残すのではなく、使う前に自動的に積立へ回すことで、手元にあるお金の範囲で生活するという考え方が示されています。
人は目の前に使えるお金があると、その範囲まで支出を膨らませやすいものです。ならば「余ったら貯める」のではなく、「先に貯めて、残りを使う」と順番を逆にする。
これは派手さのない方法ですが、年収が上がったときほど効きます。
収入アップは、本来なら資産を増やす最大のチャンスです。しかし、そのたびに住居、食事、服、車、付き合いの水準まで上げてしまえば、いつまでたっても「もっと稼がなければ」という状態から抜け出せません。
大切なのは、年収がいくらになったかだけではありません。
「増えた収入のうち、いくらを残せたか」。
そこに目を向けた瞬間から、給料が上がってもお金が残らない人生は変わり始めます。



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