ライフスタイル・インフレーションは、高級時計や高級車を買う人だけの話ではありません。むしろ怖いのは、日常の小さな変化です。
真中は管理職になってから、昼食を同じ立場の社員と外で食べるようになりました。退社時間が遅くなると、夜もラーメン店や定食屋に寄る回数が増えます。朝食はコンビニ、休日も自炊が面倒になり外食へ。以前なら少し迷った出費も、「給料も上がったし」と気にしなくなっていきます。
住む部屋を少し広くする。コンビニコーヒーが当たり前になる。スマホを短い周期で買い替える。サブスクが一つ増える。飲み会の店の単価が上がる。後輩に奢る回数が増える。
一つひとつは、家計を破壊するほどの金額ではありません。しかし生活の「あたりまえ」が一段ずつ上がると、その差額は毎月、毎年積み重なります。
しかも、こうした支出はバラバラに発生します。家賃、カード、コンビニ、外食、サブスク、ATMから引き出した現金。それぞれを見ると「大した金額ではない」と感じても、合計すると収入を上回っていることさえあります。
本人の記憶に残るのはスーツのような大きな買い物でも、実際に家計を圧迫しているのは、記憶にも残らない細かな支出の積み重ねだったりするのです。
そして赤字になっても、ボーナスで埋めることができてしまう。「生活が破綻している」という危機感を持たないまま、貯金が減っていないだけで、実は増えてもいない状態が続きます。
周囲の「普通」が、自分の「普通」を塗り替える
さらに厄介なのが、出世や転職によって付き合う相手まで変わることです。
同じ役職の人や取引先の幹部と接する機会が増えると、それまで普通だと思っていた服、鞄、店、移動手段が急に見劣りすることがあります。「周りがこのくらいなのだから、自分も」という基準が生まれるのです。


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