ソニーグループは8月、半導体受託製造最大手の台湾TSMC(台湾積体電路製造)と、イメージセンサーの合弁会社を熊本県に設立すると発表した。ソニーはキャッシュと現物資産で約4650億円を拠出、TSMCはキャッシュで約2820億円を出資する。日本政府の支援を含めれば、総額1兆円近い投資規模が見込まれている。TSMCの熊本第1工場(約1兆3500億円)に迫る巨額プロジェクトで、上げ潮ムードが続く半導体業界がいっそう沸いた朗報だ。
ソニーとTSMCの縁は深い。TSMC創業者のモリス・チャン氏は米テキサス・インスツルメンツ(TI)幹部だった1968年、ソニー創業者の一人である盛田昭夫氏に会い、長時間懇談している。チャン氏は自伝でこのことに触れ、「盛田さんはすでに立志伝中の人物だった」「懇談は楽しい経験だった」と敬意をにじませて振り返っている。辛口のチャン氏がここまで好意的に描写したのは、ほかにはTIの名経営者ハガティ、同僚でIC(集積回路)を発明しノーベル物理学賞を受賞したキルビーぐらいだ。
TSMCは長く、日本市場では営業に苦戦してきた。富士通やNECなど日本の電機大手は、半導体の設計から製造まですべて自社で手がけることにこだわったからだ。例外だったのがソニーとシャープ。特にソニーはビジネス規模が大きく、TSMCにとっては日本での最重要顧客だった。
とはいえこの両社が、友好のためだけに巨額合弁を決めるわけがない。とりわけソニーにとっては、イメージセンサー市場を揺るがす「前門の虎、後門の狼」、すなわち韓国と中国の競合2社に反撃するための一手なのである。
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