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キャリア・教育

4畳半・ミシン1台・口座残高2158円から始まった挑戦の続き〜「東大卒・外銀勤務」から"刺しゅう屋"に転身した若者の選択

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コスパ時代にあえて"時間のかかる仕事"を選んだ若者の選択は「刺しゅう」でした(写真:北区の刺しゅう屋HPより)
  • 田中 優輝 Take Risk代表・「北区の刺しゅう屋」運営
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1人で高速道路を走るように仕事をしていると、たしかに速く前へ進めます。でも、速く走るほど、窓の外の景色は流れていく。途中で誰が何を感じていたのか、自分がなぜそこへ向かっていたのかも、見えにくくなります。

私が作りたいのは、速く遠くへ進む仕事ではなく、誰かの記憶に深く残る仕事です。誰かと立ち止まり、違う目で見直し、何度も煮込んでいく。その時間があるから、作品の中に人の温度が残るのだと思います。

その仕事は、速さだけでは生まれません。違う目で見直し、何度も煮込む。その遠回りの中で、ようやく作品は人の心に残る深さを持つのだと思います。

胸元の大きな刺しゅうが特徴的なポロシャツ「王様チワワ」(左)と、カーディガン「金木犀と青い鳥」(写真:北区の刺しゅう屋HPより)

チキン南蛮の日を忘れない

ある日のお昼、社員の2人が急にキッチンで料理を始めました。チキン南蛮です。ツヤのある鶏肉に卵、タルタルソース。5人分の白いごはん。みんなで机を囲んで、「いただきます」と食べる食事。そのチキン南蛮が、予想以上においしかったのです。

外銀に勤めていたころ、六本木の高級ステーキ屋で何万円もする肉を食べたことがあります。もちろんおいしかったのですが、その夜のことは、ほとんど覚えていません。

チキン南蛮の日は、今でも覚えています。でも、おいしかったのは、料理の味だけではありませんでした。

2人が笑いながらキッチンに立ち、みんながどうでもいい話をしながら食べていました。その空気ごと、おいしかったのです。いい場所だな、と。

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