ただし、雨が降れば半分、台風ならまた半分となる。
催事の場合は、マージンや経費が余計にかかるので、店舗を閉めていく以上、大きく儲かるということはない。ただ、計画は立てやすい。ここまでいけば利益が出るというラインが明確になるのが利点だという。
かき氷屋だからこそできること
「うまくいけば儲かる年もあるけれど、最終的には努力より天気に左右される。ギャンブルです」
それでも、1000人来る可能性がある限り、毎日1000人分の仕込みはしないとならない。
残りが全て廃棄とならないよう、今は生産者と組んで果汁に加工したものを仕入れたり、OEMでシロップや練乳を半加工の状態までつくってもらうことで、原価の安定をはかっている。
今年は新たに果樹畑の再生にも取り組み、山の荒廃を防ぐ活動をしている大分の団体から、かぼすと甘夏の果汁を大量に仕入れた。
昨年からは、駅ビルやSCの空き店舗、有休用地へのPOPUPも始めている。支払いを売り上げの何%ではなく固定化することで、たくさん売れば売るほど、手元に利益が残る方法に変えている。
「埜庵を始めたときからずっと、僕は『かき氷屋として生きていくこと』を一番に考えています。かき氷をあたかも自分の作品のようには考えていません。だから、催しに出店したら、そこに自分のお客さまを呼んできて売り上げをつくるのではなく、まずはその場所に普段からいる方に向けて、かき氷をつくります。その方が僕にとっても新しいお客さまをつくれるから」
そのためには、かき氷の単価も今はなるべく値上げしたくないという。
「今は昔と違って、冬でも一定数かき氷を食べるお客さまがいる。でも、その層に向けて、いろいろ提案しすぎると高価格になっていく。高価格になると、飲食他業種の方がどんどん参入してくる。でも逆に言うと、その価格帯じゃないと手出しができない。
だから僕は、かき氷屋にしかできないかき氷を作ろうと常に思っています。シンプルだけど、氷を削ってシロップをかけるだけの、1杯1000円のかき氷を1日1000人に届ける。実はこのやり方が最も真似されにくいのです。なぜなら、『ブルーハワイでは物足りないけれど、かき氷に3000円は払えない』という感覚の人が、おそらくほとんどだと思うからです。
氷とシロップという基本的なものだけでおいしく、お客さまを呼び続けられるものをつくることができるのは、年間を通したスタッフの雇用体制を含め、日々かき氷と向き合い続けているかき氷屋だからこそできること。そこにいつも自信を持って、かき氷を削っています」
でも、そういう夏を毎日過ごすのは本当に戦いだそう。だからこそ、夏を過ごした後の冬は、1年間通い続ける常連客との時間をつくっていく。
鵠沼海岸の店舗では、それほど混雑していなければ、家庭的な雰囲気のなか、スタッフとの談笑を楽しんでいく客も多い。接客などのプラスアルファの体験や、店に流れる心地いい時間など、常連客たちが対価を払っているのは、かき氷だけではないように感じる。
一方で、百貨店の催事となると、雰囲気は一変する。広々した会場には、一列に何台ものかき氷機とスタッフが並び、次々にやってくる大勢の客相手に、ある意味で機械的に、スピード感と的確さをもって、かき氷を削り続ける。

