蒸し暑さがまとわりつく7月の午後。会議室の席に座ろうとした途端、若手のCさんがふと立ち止まり、眉をひそめた。別の席へ逃げるように移動する。その視線の先には、真面目で仕事熱心なAさん。だが、周囲はAさんの強い臭いに耐えられず、そっと距離を置くようになっていた。
上司のBさんも状況を把握している。会議中、集中力が途切れ、社員が微妙に顔をしかめる瞬間を何度も見てきた。しかし、Aさんは誰よりも誠実で、繊細な性格だ。指摘すれば深く傷つけてしまうかもしれない。かといって放置すれば、チームの空気は確実に悪くなる。
「言うべきか、言わないべきか」「どう伝えたらよいのか」――。
Bさんは毎朝、Aさんが席に着くたびに胸が重くなる。「言いたいのに言えない」この沈黙が、職場の空気をじわじわと蝕んでいくのだった。
臭いは指摘しづらいが…
暑さが厳しくなる時期には、社内で「臭い」に関する相談が増えてきます。
ただ、臭いの問題はとてもデリケートで、本人は気づきにくく、周囲は指摘しづらいものです。だからこそ、上司がどう扱うかによって、職場の空気が大きく変わります。
そして、スメルハラスメントは単なるマナーの問題ではありません。
企業には「職場環境配慮義務」があり、社員が快適に働ける環境を整える責任があります。臭いの問題は、この義務の一部として扱うべきテーマです。

