昨今、周りの弁当が値上がりする中でも、看板商品のチキン南蛮弁当は990円(税込)を維持している。すると、不思議なことが起きた。
以前は「ちょっと高い弁当」と思われていたのに、周囲の価格が上がったことで、今度は「この内容で990円なら安い」と見られるようになったのだ。味もボリュームも変わらない。変わったのは周りの価格だった。その結果、塚田農場おべんとラボのお得感が際立つようになった。
変化は取引先にも表れている。紀ノ国屋などの高級スーパーから声がかかるようになったのだ。以前は「1000円の弁当は高い」と言われた。しかし今は「せっかく置くなら、ちゃんとおいしい弁当を置きたい」そんなニーズが増え、卸先はそれまでの自社配送エリアを超えて20カ所以上に広がった。
「まだまだ広げられると思っています」
と森尾さんは話す。ただ、物価高で予算を気にする顧客も増えている。そこで始めたのが、サブブランドの「つか弁」だ。
「ユニクロとGUみたいなものです」
森尾さんはそう笑う。塚田農場おべんとラボの品質イメージは守る。一方で、より手頃な価格帯の需要も取り込む。2つのブランドを使い分ける戦略だ。
危機を救った「家飲み便」
順風満帆なようだが、塚田農場おべんとラボにも一度だけ「終わったかもしれない」と思った時期がある。
2020年4月。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発令されたときだ。会議はなくなり、イベントは中止になった。ロケも止まった。塚田農場の居酒屋は全店休業。弁当の届け先そのものが消え、宅配弁当の注文は前月比で75%減少したという。積み上げてきた売り上げは急激に落ち込んだ。
しかし、森尾さんたちは立ち止まらなかった。そこで打った手が、「おうち塚田農場家飲み便」だった。
当時はZoom飲み会が流行していた。森尾さんはそこに新しい需要があると考えたのだ。一人前のおつまみセットを作り、法人向けに全国へ宅配するサービスだ。

