もちろん、スマートフォンや生成AIによって認知能力が低下することが完全に証明されているわけではない。しかし、認知的努力を減らすことが長期的な学習に影響を及ぼす可能性は、多くの研究者が懸念していることであり、それが人々の創造力や発想を閃かせる能力を弱めるようなことは避けたいものだ。
コーネル大学の心理学者ロバート・スターンバーグ氏は「生成AIが台頭するこの時代における最大の懸念は、それが人間の創造性や知性を損なうかもしれないということではなく、すでにそれが損なわれているということだ」と危機感をあらわにしている。
自ら調べ、考えることが何より大事
パソコン、インターネット、スマートフォン、そして生成AI。情報分野における大幅な進歩は、それが登場するたびに仕事や社会生活における利便性を向上してきた。しかし上にも記したように、スマートフォンの中毒性と生成AIの手軽さは、人々の考える力を奪いつつあるように思える。
もちろん、生成AIは正しく使えばそれなりに便利なものだが、依然として誤った回答を出力する問題も完全には取り除けていない。
文部科学省は昨年末「初等中等教育における生成AIの利活用に関するガイドライン」を発表している。
その文書では、基本的な考え方として、生成AIの出力はあくまで参考例であること、正確でもなければ質問に対する最適な回答とも限らないことなどを認識する必要があると述べている。さらに、リスクや懸念を踏まえつつ、最後は人間が判断し、生成AIによって作成した成果物にも自ら責任を持つという基本姿勢を持つことが重要だと説明している。
まず自分で考えてみて、もしわからないところがあれば、ウェブを検索するなり、AIチャットボットに尋ねてみるのは悪いことではない。それは図書館などへ行って調べものをするのと大差ないと考えられる。
ただ、AIチャットボットはときどき知ったかぶりをすることもあると念頭におき、特に正確性が求められる事柄においては、AIの回答をそのまま受け入れるのでなく、他の情報源も参照して自ら判断する習慣を、日頃から身につけておくのが知識を高めるという点でも重要と言えそうだ。

