――最初のきっかけは何だったのですか。
2023年5月11日のことだった。「酒井清子」を名乗る人物からフェイスブックに「友達申請」がきた。名前も、アイコンに表示されている写真も見たことはない。いつもであれば深く考えることなく削除をする。SNSの友達申請が詐欺の端緒になるケースが多いことは知られていたからだ。
だが、削除しようとしたその時、手が止まった。フェイスブックに表示された「共通の友達」の中に、見覚えのある名前があったからだ。私がレスリングの実業団チームに所属していた時の指導者だ。人柄がよく、たいへんお世話になった恩師。私と同じ元オリンピアンだが、アスリートとしては雲の上の存在だった。
信頼の最上位にいる恩師と、彼女は「友達」だった。私は削除するのをやめ、友達を「承認」した。間もなく、酒井清子からメッセージが送られてきた。
「はじめまして、酒井清子と申します。よろしくお願い致します。」
彼女に恩師との関係を聞いてみたが、とくに深い付き合いはなく、仕事上の接点もないということだった。ではなぜ友達に?と思ったが、それ以上は聞かなかった。
彼女は中国籍で、母親は日本人だという。フェイスブックのプロフィールには海外生活をうかがわせる写真が並んでいた。メッセージをやりとりしているうちに意気投合し、私が日常使いしているLINEで交信を続けることになった。
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