ブリリアント・ジャークは、こうした低強度の無礼を撒き散らす。これらは1つひとつを見れば些細なことかもしれない。もちろん、極度の集中状態にあるときや、緊急対応の最中に、愛敬を振り撒けないことはあるだろう。それは許容されるべき、業務上のノイズだ。
だが、ブリリアント・ジャークの無礼さは違う。そこにはしばしば、相手によって態度を変える意図的な選別が含まれている。
たとえ本人に悪気がなかったとしても、あいさつを無視されたり、透明人間のように扱われたりすれば、された側は「自分は尊重されていない」と深く傷つく。これが放置されると、組織の規範が緩む。「この職場では、こういう態度をとっても許されるんだ」という誤ったメッセージが伝わる。
すると、伝染が始まる。
上司に無視された部下は、そのストレスを抱え、同僚に冷たく当たるようになるかもしれない。「あいさつしても無駄だ」と学習し、自分もあいさつをしなくなるかもしれない。無礼が無礼を呼び、職場全体がギスギスし始める。心理的安全性は低下し、誰も協力しなくなる。
「たかがあいさつ、たかがため息」ではない。それは組織という堤防に空いた、蟻の一穴なのだ。
無意識の「微細な攻撃」
ブリリアント・ジャークの言動には、「マイクロアグレッション(微細な攻撃)」が含まれることがある。マイクロアグレッションとは、悪意の有無にかかわらず、特定の属性(性別、年齢、雇用形態など)に対する偏見や差別的なメッセージを含む、些細な言動のことだ。
「女性ならではの気配りですね」(女性はケア役割を担うべきだという偏見)
「まだ若いのにしっかりしてますね」(若者は未熟であるという偏見)
「中途入社のわりには馴染んでますね」(中途は外様であるという偏見)
言った本人はほめているつもりかもしれない。しかし、言われたほうは「属性でしか見られていない」「下に見られている」という疎外感を覚えることもある。

