サブスクの場合、CDやダウンロードに比べて1再生当たりの収益単価は低い。数千万曲を揃えるサブスクによって、音楽市場は競争原理にさらされており、ベテランアーティストでも、生き残ることが難しいビジネス環境になっている。日本のコンサートでは相変わらず、スマホでの撮影が禁止されているなど、パフォーマンスへの考え方も旧態依然としている部分がある。最近になって、新曲に関してはスマホでの動画撮影をOKにして、積極的にSNSなどへの配信を促すアーティストも増えている。海外での拡散を意識したプロモーションも広がりつつあると言っていいだろう。
昭和のJ-POPが世界でヒット?
そんな中で最近注目されてきたのが、日本の古い曲が世界で注目されているという現象が起きていることだ。サブスクによるストリーミングを利用している人ならわかるが、例えば昔のJ-POPを1曲聴くと、レコメンド機能によって、絶え間なく昔のJ-POPの曲が流れ続ける。日本では昔懐かしい曲だが、海外では初めて聴く新鮮な楽曲として捉えられる。
よく知られているJ-POPの海外ヒット曲としては、「松原みき」の「真夜中のドア~Stay with me」がある。2020年12月にSpotifyのグローバル・バイラルチャートで世界1位を獲得し、累計再生回数も大きく伸ばした。「竹内まりや」の「プラスティック・ラブ」もYouTubeの非公式動画時代に爆発的な再生回数を記録するなど、動画投稿サイトやストリーミングによる自然発生的なヒットとして報道された(日経ビジネス「なぜ今、松原みき? 昭和の「シティポップ」が世界でヒット」より)
最近では、SNSでバズったギタリストの高中正義さんのロンドン公演が大盛況だったというニュースも流れた。その他「ONE OK ROCK」や「藤井風」はアジアツアーを断続的に実施しており、「YOASOBI」も2026年10月から2027年にかけて、日本人アーティストとしては初となるアジア10大ドーム&スタジアムツアーを開催する予定だ。
こうした日本人アーティストの活躍を背景に、ソニー・ミュージックエンタテインメントとユニバーサル ミュージック合同会社は、アジア地域における音楽フェスティバルの企画・運営を目的とした合弁会社「NINE BY NINE株式会社」を設立している。
もっとも、近年は本人の公式発信だけでなく、SNSや動画投稿サイト、ストリーミングのレコメンドを通じて過去曲に火がつくケースも目立っている。音楽配信によるヒット曲というのは、時代も関係なければ、国境も関係ない。アーティストが現役かどうかはもちろん、生死すら問題にならない。これまでのようにプロデューサーがいて、巨額の資金を投入して様々なプロモーションを通じてヒットを作り出していく……。そんなヒットのメカニズムを大きく変えたわけだ。

