無印はこの5月20日、京都にアンチ観光色の強い宿泊施設「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」をオープンしている。
京都の日常の暮らしをテーマに据えたホテルだが、あえて観光の中心である清水寺エリアに建てたのが興味深い。早朝に清水寺を散歩するガイドツアーがあるとのことだ。確かに清水寺は尾根上にあり、人の少ない時間なら尾根の麓を流れる暗渠の水音が聞こえることがある。
渋谷も深夜から早朝に歩けば、今は暗渠となっている宇田川の水音が聞こえる場所もあるのかもしれない。いずれにせよ、消費の殿堂パルコと過度な装飾への内省を促すような無印良品の並びは、京都に例えれば煌びやかな「金閣」と静寂な「茶室」が並び立つ光景のようだ—— 。
ここにいまも変わらない渋谷の持つ多様性という底力を感じる。
なぜ「タワレコ」に多様な年齢層が訪ねるのか?
公園通りの坂下に立地するのがタワーレコードだ。SNSで「もはやCDがない」との声を耳にし久しぶりに訪ねてみた。
確かに1階は想像以上にスカスカではあったが、米津玄師など人気アーティストの視聴体験ができ、様々なジャケットを見られるコーナーになっていた。現在CD購入はジャケットコレクションが主流とも言われる。それを踏まえた形態だといえよう。
タワーレコード株式会社の直近決算(2025年2月期)では純利益約14億3600万円を計上した。もとのアメリカ本社倒産や音楽の配信化の波を乗り越え経営は持ち直し基調にあると言える。
どのように渋谷の若者を取り込んだのであろうか?
上階フロアを訪ねる。人気アーティストを背に写真撮影できるコーナーが設置され、若い女子グループが順番待ちしていた。音楽配信サービスやYouTubeを介しスマホで出会ったアーティストと写真に納まりSNSに上げるのは、現在の若者流の楽しみ方だ。
慶応義塾大学名誉教授の岸由二氏は、著書で次のように明かしている。
「君は誰と、どこで暮らしていると感じている?」と慶応の学生に聞いてみる。かつては町田、日吉といった答えが多かった。ところが2010年頃から「家族と、家で」「ひとりで、家で」と答える学生が増えてきた——。
自身の住まいをもっぱら「家」と捉えているのだ。
これは若者の空間認識において、地理上の場所の感覚が薄れ“スマホの内的空間”へと移りつつあったことと繋がるようにも思える。渋谷はスマホ内部の延長線上の景色なのだ。

