それを見て西郷氏が「教室だと落ち着かなくなった?」と聞くと、「はい」という返事が戻ってきた。さらに「休みたいの?」と聞くと、「はい」との返事。それで「じゃ、仕方ないな」となって、しばらく生徒は校長室で過ごしていた。こんな具合に、校長室のドアはいつも開けっぱなしだった。
「こうやって出入り自由にしておけば入りやすいし、構えることなく話せるようです。雑談しに来る子もいれば、相談に来る子もいるし、ただ休みに来る子もいます」
教室に居づらい生徒にとっては、学校の中にある安らげる場になっていた。前もって約束をするとか、理由がなければ来てはいけない、となれば来るのは難しい。行こうという気すら起きないだろう。学校に安心できる場がないことになる。その安心できる場が西郷時代の桜丘中学では校長室だった。
その校長室のドアが、今では閉じられている。生徒が安らげる場が減ったことになるのだ。そうなった理由について、先ほどの元桜丘中学教員は言った。
「西郷さんが辞めてからの新しい校長は、ストレートに口にこそ出されなかったけど、『生徒の相手は校長の仕事ではない』という雰囲気が感じられました」
定期テストも復活
復活したもので代表的といってもいいのが、「定期テスト」である。これも西郷時代には廃止されたものの1つだった。廃止の理由は、18年度の生徒総会の総意で決まったからだ。
西郷時代の生徒総会は、かなり活気溢れるものだったらしい。いろいろな要望が学校側にぶつけられたし、議論も活発だった。それは、「生徒総会で決まったことは必ず実現させる」と西郷氏が宣言していたからだ。自分たちが意見を出して、話し合って合意したことが実現するとなれば、生徒だって本気になるわけだ。
そう西郷氏が宣言したのは、「自分で考え、行動すること」を体験してほしかったからのようだ。まさに「子ども1人ひとりが主語」の実践である。

