2カ月後には、第2弾の「100億円キャンペーン」を投下し、一気に数百万人のユーザーを獲得。その後、サービス開始から1年足らずで1000万人を突破することになります。PayPayの初動にこれ以上ないほどのブーストをもたらしたのです。
既存市場をディスラプトするのは「狂気」だ
辺境の小国・PayPayが仕掛けた「100億円あげちゃうキャンペーン」。マーケティングの教科書ではとうてい説明できない「焦土作戦」でした。
競合他社が入り込む隙間もないほど、圧倒的な物量で市場を焼き尽くす。その結果、第1弾のキャンペーンはわずか10日間で終了したものの、その爪痕は日本列島の隅々にまで深く刻まれました。それまでキャッシュレス決済に興味のなかった多くの人々が、この熱狂的な「お祭り」に参加する形でPayPayのアプリを入れ、店頭でスマホをかざし、その利便性を知ることとなったのです。
「バラマキだ」「消耗戦を仕掛けてどうするのか」「単なるポイント目当てが中心なのでは?」——メディアや専門家からは数多くの批判も受けました。しかし、既存の市場を破壊(ディスラプト)するためには、時にはこうした「狂気」とも思えるような奇襲が必要だったと、私は確信をもって振り返っています。
銀行やクレジットカード会社といった金融業界のオールドプレーヤーたちが、何十年、いや、100年以上の歳月をかけて築き上げてきた、堅牢な決済システム。その牙城に、PayPayのような、どこの馬の骨ともわからないベンチャーが風穴を開けようというのです。教科書どおりのマーケティング戦略でちまちまと戦っていては、絶対に勝ち目はありません。
彼らが長年かけて作り上げてきたルールや慣習といった土俵の上で戦うのではなく、その土俵そのものをひっくり返してしまうような、非連続な一撃。それこそが、ディスラプションの本質です。
そして、その破壊的な一撃は、しばしば合理性や常識を超えた、「狂気」から生まれるのです。その「狂気」を知らしめてくれたのは、「孫正義」という傑物でした。

