教員の働き方をめぐる議論は、ここ数年で大きく動いてきました。2025年6月には、教員に残業代を支給しない代わりに給料月額の4%を「教職調整額」として一律支給するという長らく批判されてきた「給特法」が、50年ぶりに大幅改正することが決定しました(労働政策研究・研修機構 ビジネス・レーバー・トレンド)。
このような現代の働き方に合わせた制度変更は素晴らしいことであり、こうした改定は現場レベルでも評価する声が大きいです。しかしその一方で、現場では別種の問題が静かに進行しています。それは、「頑張る先生」と「頑張らない先生」のあいだに広がりつつある分断であり、そして皮肉なことに、熱心な教員ほど職場で居心地の悪い思いをする、という現象です。
残業代が出ない仕組みと、その歪み
まず、給特法の改定についてお話しします。公立学校の教員には、原則として残業代が支給されません。1972年に成立した給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)が、給料月額の4%を「教職調整額」として一律支給するかわりに、時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しないと定めているためです。
この4%という数字は、制定当時の月8時間程度の残業を想定して算定されたものでしたが、現在の実態とは大きく乖離しています。文部科学省が公表した最新の調査では、2024年度に時間外勤務が月45時間以下に収まった教員は、公立中学校で60.5%、小学校で77.8%、高校で72.6%にとどまっています(文部科学省 学校の働き方改革のための取組状況調査)。裏を返せば、中学校では4割の教員が国の上限指針である月45時間を超えて働いていることになります。
そこで、2025年成立の改正給特法では、教職調整額を2026年1月から段階的に引き上げ、2031年1月までに10%にすることが定められました。半世紀ぶりの処遇改善となります。が、これによって「残業代を時間に応じて支払う」という民間で当たり前の仕組みに移行するわけではありません。長時間労働の根本構造は据え置かれたまま、調整額だけが厚くなる――その意味で、現場の働き方そのものを変える効果は限定的です。

