東洋経済オンラインとは
ライフ

「東京に家が建つお金をつぎ込んだ」…ビートルズに人生を捧げた75歳《"推し活"に62年》の果てに起きたこと

11分で読める
ビートルズ文化博物館の外観
“究極の推し活”の生き様にふれるべく、「ビートルズ文化博物館」を訪れた(写真:筆者撮影)
2/5 PAGES
3/5 PAGES
4/5 PAGES

その後、医師の紹介から、「あなたのコレクションで赤穂を元気にしてくれませんか?」と声をかけてくれる有志との出会いが生まれた。そこから博物館の実現に向けて、話はトントン拍子に転がっていく。仲間とともに夢へ向かう中で、岡本さんはみるみる元気を取り戻していった。

物件探しでは、1階の前面にシャッターが降りた2階建ての古い商家に直感で惹かれた。太陽光が入らない東向きという点も決め手だった。写真や書籍など、日焼けに弱い貴重な紙ものを守るためだ。

「ビートルズと古民家、一見ミスマッチですよね。でもビートルズの音楽には、どこか懐かしく、日本人の琴線に触れる民謡のような普遍性がある。木と土の温もりがある空間こそ、彼らの音楽を聴くのにふさわしい場所じゃないかと思ったんですよ」

2016年5月、長年の思いが結実した私設「ビートルズ文化博物館<サロン・ド・グラスオニオン>」は、こうして生まれた。

ビートルズの抜群のセンスを象徴する、アップルレーベルのレコードデザイン。A面には丸ごとの青リンゴ、B面には「半分にカットされたリンゴ」が中央にあしらわれている。音楽を聴くまでの視覚的な仕掛けも含めてひとつのアート作品になっている(写真:筆者撮影)

「あなたなら」─英国女性から託された宝物

博物館に展示した2万点を超えるコレクションは岡本さんが半世紀以上かけて集めてきたもの。“東京・三鷹に一軒家が建つ”ほどの私財を投じてきた。

コレクションへの基本姿勢は、「ビートルズのファンでいたい。ビートルズの商品で商売はしたくない」ということだ。かつて、ビートルズの公式グッズが高額転売されている様子を見た岡本さんは強い違和感を覚え、「ビートルズの音楽と精神を次世代に伝える」姿勢へと完全に一貫していく。

また、コレクションの一つひとつはビートルズの背景を語る手段に過ぎず、その価値は金銭の額では測れないという。

ビートルズは、音楽や文化で偉業を遂げた以上に、人類の歴史上で初めて現れた、社会に大きな影響を与えた先駆者だ。3冊目の自著『私の深読み それはビートルズからの警告だった。』(セルバ出版)のなかで岡本さんは力説する(写真:筆者撮影)

では、岡本さんにとっての「超貴重なコレクション」とは一体何か。それは、1996年頃、ビートルズの出身地である英国リバプールで年に一度開催される祭典「インターナショナル・ビートルウィーク」で手に入れた、ある宝物だ。

岡本さんはこの頃すでに博物館の構想を思いついており、「日本でビートルズ博物館のようなものをつくり、世界中からコレクションを集め、私の死後も残すつもりだ」という趣旨を英語で書いたチラシを携えて、現地へ渡った。

そこで出会った一人のイギリス人女性が、1963〜1964年当時の雑誌の切り抜きを保存した、大切なスクラップブックを2冊持っていた。事情があって手放さざるを得ないが、どうしてもお金には換えたくないのだという。

それがその宝物。英国女性のビートルズ愛が伝わってくるスクラップブックだ。雑誌切り抜きの配置に高いセンスを感じる(写真:岡本さん提供)
このスクラップブック自体も非常に貴重なものだという。ビートルズのマネージャー、ブライアン・エプスタインが作ったビートルズファンクラブ公式のビートルズグッズなのだそう(写真:岡本さん提供)

4人のリアルタイムの動向を知る一級の歴史的資料だ。チラシを見せ、たどたどしい英語でビートルズへの情熱を伝えると、彼女は「あなたなら」とその宝物を無償で託してくれた。

5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数