「人生をビートルズに捧げていると、思いもよらない幸運が舞い込むことがあるんだなって思いましたね」
紙の劣化が進んでいるため展示は難しいが、岡本さんはなんとしてでもこれを次世代に引き継いでいく考えだ。
ビートルズを「世界無形文化遺産」へ
2026年、開館から丸10年を迎えた。博物館は地域の枠を超え、全国のファンをつなぐ文化発信の拠点になっている。最近は20〜30代の若い世代の来館も目立ち、確実に世代交代が進んでいると岡本さんは語る。
しかし、私設博物館の運営は非常に厳しいのが現状だ。維持支援費としての入館料300円では、光熱費や建物の維持管理費すら賄えず、赤字分はすべて岡本さんの持ち出しだ。さらに、2万点にのぼるコレクションの湿度・温度管理、数カ月ごとの展示替えなど、75歳を迎えた岡本さん一人が背負う負担は決して軽くはない。
「でも、僕の代で終わらせるつもりはないですね。この博物館とコレクションを、なんとかして次の世代に引き継いでいきたい。それが、僕の人生を変えてくれたビートルズへの恩返しですから」
岡本さんはヒヒッと無邪気に笑う。
目下の目標は、ビートルズの音楽とその精神を「世界無形文化遺産」に登録することだ。そのために現在、彼らの“偉業と叡智”を網羅する『ビートルズ叡智図譜大全』と題した書籍の完成に向けて、日々制作に励んでいる。
「完成したら、ポールとリンゴに直接手渡すのが夢なんですよ」
14歳でビートルズに出会ってから、楽しい日も苦しい日も、常に4人とともに歩んできた。「ビートルズ狂」を自称する岡本さんの人生には、今も“推し活”を超越した純粋なエネルギーがみなぎっている。
「好き」のエネルギーが大きく動く“推し活”は、時として心地よい同調だけを求めて新たな分断を生んでしまうこともある。しかし、岡本さんの情熱はどこまでも開かれている。
ビートルズが音楽という平和な方法で世界をひとつにしたように、そのメッセージを受け取った岡本さんもまた、ビートルズを通じて「愛・自由・平和」という核となるメッセージを伝えることで、国境や世代の壁を越えて他者とつながろうと願っている。
2026年6月29日、ビートルズは来日60周年の節目を迎える。
「名声と富を得て、次に何を望みますか?」
かつて、来日当日の記者会見で、記者からの質問にジョン・レノンとポール・マッカートニーは即答した。
――「PEACE(平和さ)」


