2002年2月から08年2月までの73カ月間は戦後最長の景気拡大局面としてもてはやされた。本書は「いざなみ景気」と名付けられたこの局面を主たる分析対象に据え、リーマンショック後の10年に出版された。足元の経済状況を必要以上に楽観もしくは悲観した当時の世相を喝破する質実剛健な議論は今も色あせない。
出版当時、まだエコノミストとして駆け出しだった私は、本書にたくさんの付箋を貼り、書き込みをした。その跡をいま改めて振り返っても、紹介したい箇所は数多い。講演など各所で、私は「腐らない議論」の重要性を説くようにしてきたが、それも本書の「堅実な観察に基づくシンプルな議論の力にはかなわない」という一節に影響されたものだ。
本書では、シンプルで力強い議論が、第1章から展開される。具体的には、国民経済計算(GDP統計)に基づき、いざなみ景気の起点となった02年と、景気拡大のピーク(07年)やリーマンショックを挟んだ08年を比較する。
日本の人々は「豊かさ」を享受できていなかった
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