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週末の昼下がり、広島県福山市の中心部。元百貨店の1階に広がるコワーキングスペースでは、若い起業家が打ち合わせを重ねている。その隣では、地元農家のマルシェが賑わい、さらに手前では中高生が「まちなかの自習室」として放課後を過ごしている。館内を貫く通路の脇では、古着屋のオープン準備が進んでいた――。
2022年9月に開業した「iti SETOUCHI(イチセトウチ)」の建物は、3度にわたって商業施設としての役目を終えた元・中四国最大級の百貨店「福山そごう」である。だが、2025年度には年間約400回のイベントが開かれ、約7万4000人が訪れる場所となった。全国から視察が殺到し、グッドデザイン・ベスト100にも選ばれている。
ところが、運営する福山電業社長の島田宗輔さんは、こともなげにこう言い切る。
「ここを黒字にしようとは思っていません」
約5億円を投じて蘇らせた施設を、黒字化を目指さずに運営する――商業施設の常識を根底から覆すこの発言の裏には、緻密に計算された「稼がない」ビジネスモデルがあった。
「赤字1000万円は広告宣伝費」逆説の経営思想
「当初から、年間1000万円程度の損失は『広告宣伝費』だと捉えています。だから、収支がトントンになればそれでいい。この事業で会社の認知度が上がり、地域の人や企業とのつながりが増えることは間違いありません。今後、採用と人材育成に効果があれば十分です。そうしたビジネスモデルを作れれば、福山にも会社にも自分にも意味があると考えました」
こう話すのは、iti SETOUCHI を運営する福山電業社長 島田宗輔さん。
