この施設は「竣工」という概念を手放し、未完成のまま常に変わり続ける場所としてオープンした。そのため、未完成を利用した仕掛けもできる。
「施設内にDIYスタジオがあるので、正月の餅をつこう、そのためにまず杵を作ろう、という具合にやっています。1人でも多くの『手垢』がついているほうが、本来ここにはいいはずですから。一緒に作ることによって、自分のまちだという意識や愛着も高まります」(島田さん)
コワーキング利用者が1カ月で古着屋を開業
スモールステップのチャレンジを重ね、飛躍した人もいる。
コワーキングスペースを利用する加藤雄也さんは、広告代理店の仕事と並行して、イベントプロデュースを手掛け、オンラインショップやイベントでの古着販売を手掛けていた。
「仕事のすべてがiti SETOUCHIでできるので、とにかく早く進むんですよ。コワーキングスペースでデスクワークをしながら、ここで開くイベントの準備ができる。困ったことがあっても、相談できる人がすぐそばにいるので、あっという間に解決します」
小規模のイベントから始め、2024年春からは季節ごとに「福ヤマ古着コレクション」と銘打った大規模イベントを開催。手応えを得た彼は、2025年8月に独立し、2026年3月にiti SETOUCHI内に常設の古着屋をオープンした。
前月2月までは別の団体が使っていた場所に、わずか1カ月足らずで店舗をオープンできたのは、チラシを作るのも、内装工事を手伝ってもらうのも、iti SETOUCHI内ですべて完結したからだという。
施設内に相談相手、協力者、顧客が揃っている――この“エコシステム”こそが、小さな挑戦を加速させる仕掛けだった。
