恐怖心に駆られたラミアは、なんとかしてケーキをつくらなければ、と必死になるが、おばあちゃんはどこか浮かない表情。それでも孫のために「卵は子孫繁栄のため。小麦粉は命のため。砂糖は人生を甘くするため。ふくらし粉はフワフワにするため」とケーキの材料について教え、父親の形見となる懐中時計をラミアに手渡してくれた。
翌朝、ラミアはおばあちゃんとともに街に出掛けることとなった。街ではおばあちゃんが新しい衣服を買ってくれたり、おいしい食事をふるまってくれたりしたが、実は街に出てきたのはケーキの材料を買うためではなく、知り合いの女性にラミアを養子として預け、彼女の世話を頼むためだったのだ。
ふたりは押し問答を繰り広げる。「ここにいれば食事も与えてくれるし、服だって買ってもらえる」「わたしはケーキのために街に来たの」「うちにはお金がないんだ。ケーキのことは忘れな」「わたしのせい? なんでもするから!」――。
それは孫娘の幸せを思ってのことではあったが、大好きなおばあちゃんと暮らし続けたいと願うラミアは、ショックを受けてその場から逃げ出してしまう。
それでも自分の力でケーキの材料を集めれば事態を変えられるのでは、と信じた彼女は、「くだもの係」を命じられた親友のサイードとともに街を駆けずりまわることになる。だが多くの人々が貧困に苦しむご時世に、子どもたちがケーキの材料を集めることは決して楽なことではなかった。
大人たちは往々にして自分本位で、子どもたちにも冷たく接するが、一方で温かなまなざしを向ける大人たちもいる。果たしてラミアは大統領のためのケーキをつくることができるのか――?
イラクでの撮影は困難を極めた
本作のメガホンをとったのはイラク出身のハサン・ハーディ。戦時下のイラク南部で育った彼は、長年にわたってジャーナリズム、映画制作の分野で活躍。
