やはりおいしい食事をしながら、みんなで談笑する時間は特別です。スープから始まって、前菜、メインと続くフルコースを、塩貝選手と一緒にいただきました。のちに塩貝選手は当時の心境をこう振り返っていました。
「オランダに来た当初はいろいろ大変でした。僕はマリノスに特別指定で登録していたとはいえ、基本的に大学でプレーしていたので生活サイクルがまったく違ったからです。学生スポーツは一日中チームメイトと一緒にいるじゃないですか。用具の片付けも、学校も、食事も一緒。そして家に帰れば家族がいる。
でもプロでは、朝練習に行ってチームで昼飯を食べて家に帰ったら、そこからはずっと一人。夜飯も自分で作って一人で食べて寝る。それを繰り返す。学生生活と正反対の環境になって、一人の時間が多すぎて寂しくなっていました。そんなときに龍後さんとシェフが来てくれたんです。気持ち的にだいぶ助かりましたね」
その後も都築シェフに定期的にオランダへ出向いてもらい、僕が一人で行って鍋を作ったこともありました。
選手にとって食事はパフォーマンスを支える栄養源であるだけでなく、気持ちをリフレッシュできる娯楽の一つでもあります。選手がオフで旅行に行くときはおいしいレストランを教えてと言われることがあります。そんなコミュニケーションも好きなんですよね。
クラブハウスに炊飯器を
食事の環境を整えるために、クラブに交渉することもあります。
塩貝選手がNECナイメヘンに加入したとき、すでにクラブに小川航基選手と佐野航大選手がいました。日本人選手が計3人になったことを受け、僕はクラブにある提案をしました。
それは炊飯器を買うこと。
NECナイメヘンは練習後にクラブハウスでランチを食べる流れになっているのですが、主食はパスタとパンが中心でお米は用意されていなかったんですね。そこで僕は一番年上の小川選手と相談して、テクニカルダイレクターのカルロス・アルバースにこう提案しました。
「お米は自分たちで買うから、クラブハウスでお米を炊いてくれませんか?」
カルロスは快諾してくれ、NECナイメヘンのランチに炊き立てのご飯が用意されるようになりました。
ちなみにお米代は小川選手が出して、一番年下の塩貝選手が買い出しを担当していました。
日本人選手3人だけでなく、他の選手も好んで食べるようになり、オランダ人DFのフィリップ・サンドラーもお金を出してくれるようになりました。サンドラーは元マンチェスター・シティの実力者です。
サンドラーは日本人選手たちとよく日本食レストランにも訪れており、塩貝選手がチームに馴染むのを助けてくれました。

